
介護現場における採用業務の課題とは
介護業界では慢性的な人材不足が続いています。2025年には約55万人、年間約6万人の介護人材確保が必要とされる中、採用業務の負担は年々増大しています。
「応募が集まらない」「面接の日程調整に時間がかかる」「採用業務に追われて本来の介護業務に集中できない」—こんな悩みを抱える介護事業者は少なくありません。
特に中小規模の介護事業者では、専任の採用担当者を置くことが難しく、現場のリーダーや管理者が採用業務を兼務しているケースがほとんどです。そのため、採用活動に十分な時間を割けず、効果的な人材確保ができないという悪循環に陥っています。

介護業界の採用課題は単なる「人手不足」だけではありません。採用業務自体が現場の負担となり、本来の介護サービスの質にまで影響を及ぼしているのです。
では、具体的にどのような課題があるのでしょうか。
介護事業者が抱える採用業務の5つの負担
介護事業者が採用業務で感じる負担は多岐にわたります。特に中小規模の事業者にとって、これらの負担は経営を圧迫する大きな要因となっています。
採用業務における主な負担を5つ紹介します。これらの課題に心当たりがある方は多いのではないでしょうか。
1. 応募者不足による広告費の増大
求人を出しても応募が集まらないため、複数の求人媒体に掲載したり、広告費を増額したりする必要があります。しかし、費用をかけても効果が見えにくく、採用コストが膨らむ一方です。
特に地方の介護施設では、そもそもの求職者数が少ないため、いくら広告を出しても応募が集まらないというジレンマを抱えています。
「先月は求人サイトに10万円使ったのに、応募はたった2件だった」
このような状況は、中小介護事業者の経営を圧迫する大きな要因となっています。
2. 採用業務に割く時間の確保が困難
介護現場では日々の業務に追われ、採用活動に十分な時間を割けないことが大きな課題です。応募者への連絡、面接日程の調整、採用書類の作成など、採用に関わる業務は多岐にわたります。

現場のリーダーや施設長が採用業務も担当するため、本来の介護サービスの質が低下したり、残業が増えたりするケースも少なくありません。
厚生労働省の調査によると、介護職員の約4割が「事務作業の負担が大きい」と感じており、採用関連の業務もその一因となっています。
3. 人材紹介会社への高額な紹介料
応募者不足を解消するために人材紹介会社を利用する事業者も多いですが、紹介料は採用者の年収の30〜35%が相場です。年収300万円の介護職員を採用した場合、90〜105万円の紹介料がかかる計算になります。
中小規模の介護事業者にとって、この金額は大きな負担です。しかも、採用した職員が早期に退職した場合のリスクも考慮する必要があります。
「紹介会社を使って採用したスタッフが3ヶ月で辞めてしまい、紹介料が無駄になった」という声も少なくありません。
4. 採用ノウハウの不足
介護のプロフェッショナルであっても、採用のプロフェッショナルとは限りません。効果的な求人原稿の書き方、面接での評価ポイント、採用後のフォローアップなど、採用に関するノウハウが不足しているケースが多いです。
特に、大手介護チェーンとの差別化ポイントを明確にした求人戦略を立てることが難しく、「なぜうちの施設を選んでもらえるのか」という採用の本質的な課題に向き合えていない事業者も少なくありません。
5. 採用後の定着率の低さ
苦労して採用しても、早期離職してしまうケースは介護業界の大きな課題です。厚生労働省の調査によると、介護職の離職率は約15%で、そのうち入職1年未満の離職が約4割を占めています。
採用活動に時間とコストをかけても、定着しなければ意味がありません。採用から定着までを一貫して考える必要があるのです。
採用業務の負担を軽減する10の効果的な方法
介護事業者の採用業務における負担を軽減するためには、戦略的なアプローチが必要です。ここでは、すぐに実践できる10の効果的な方法を紹介します。
これらの方法は、中小規模の介護事業者でも取り入れやすいものばかりです。自施設の状況に合わせて、できるところから始めてみましょう。
1. 採用業務の専任担当者を設置する
可能であれば、採用業務を専門に担当するスタッフを配置しましょう。小規模な事業所では難しい場合もありますが、週に数日だけでも採用業務に集中できる時間を確保することが重要です。
採用担当者は、求人原稿の作成から応募者対応、面接調整、入職手続きまでを一貫して担当することで、採用プロセスの効率化が図れます。

「採用担当者を置いたことで、現場スタッフの採用業務の負担が大幅に減り、本来の介護業務に集中できるようになった」という声も多く聞かれます。
2. 採用業務を外部委託する
採用業務の一部または全部を外部の専門会社に委託する方法も効果的です。近年では、介護業界に特化した採用代行サービスも増えています。
例えば「かいごのおたすけ採用隊」のような中小介護事業者専門の採用課題解決サービスでは、月額10万円(税別)で採用業務を完全代行し、初期費用無料、成果報酬無料、求人掲載費込みの明確な料金体系を提供しています。
このようなサービスを利用することで、専門的なノウハウを活用しながら、内部リソースを本来の介護業務に集中させることができます。
3. ICTツールを活用して業務を効率化する
採用管理システム(ATS)やオンライン面接ツールなどのICTを活用することで、採用業務の効率化が図れます。応募者情報の管理、選考状況の把握、面接日程の調整などを一元管理できるため、大幅な時間短縮が可能です。
福山市では「介護職員等負担軽減支援アドバイザー派遣事業」を実施し、介護サービス事業所・施設のデジタル化と職員の負担軽減を進めるためのアドバイザーを派遣しています。このような自治体の支援制度を活用するのも一つの方法です。
「オンライン面接を導入したことで、応募者の移動負担が減り、より多くの方に面接に参加してもらえるようになった」という事例も増えています。
4. 採用ブランディングを強化する
自施設の魅力を明確に伝えるための採用ブランディングは、応募者増加に効果的です。大手施設との差別化ポイントを明確にし、中小事業者ならではの魅力(アットホームな職場環境や成長機会など)を最大限に活用しましょう。

施設の理念や働きやすさをアピールするための施設紹介動画や、スタッフインタビューなどのコンテンツを作成し、求人サイトやSNSで発信することも効果的です。
「うちの施設ならではの魅力を伝える求人原稿に変更したところ、応募数が3倍に増えた」という成功事例もあります。
5. 採用チャネルを多様化する
求人サイトだけでなく、SNS、地域のコミュニティ、職員の紹介など、多様な採用チャネルを活用しましょう。特に、既存職員からの紹介は、ミスマッチが少なく定着率も高い傾向にあります。
紹介制度を導入する際は、紹介者へのインセンティブ(報奨金など)を設けることで、より積極的な紹介を促すことができます。
また、地域の介護福祉士養成校との連携や、実習生の受け入れも、将来的な採用につながる重要なチャネルです。
6. 採用プロセスを簡素化する
応募から内定までのプロセスを見直し、不必要なステップを省くことで、応募者の負担を減らし、採用までの期間を短縮できます。
例えば、一次面接をオンラインで実施する、応募書類を簡素化する、選考結果の連絡を迅速に行うなどの工夫が効果的です。
「応募から1週間以内に面接、その場で合否を伝えるようにしたところ、内定辞退が減った」という事例もあります。
7. 業務の切り分けと無資格者の活用
介護業務を細分化し、専門的なスキルが必要な業務と、そうでない業務を明確に分けることで、人材確保の幅を広げることができます。
例えば、清掃や洗濯、配膳などの周辺業務は、無資格者や高齢者スタッフでも担当可能です。東京都健康長寿医療センター研究所の調査によると、高齢者が介護助手として周辺業務を担うことで、介護スタッフの身体的・精神的負担感の軽減につながる可能性が示されています。
「高齢介護助手を導入したことで、介護職員が本来の専門業務に集中できるようになり、離職率も低下した」という効果も報告されています。
8. 採用と定着を一体的に考える
採用活動と定着対策は切り離せません。入職後のフォローアップ体制を整え、新入職員が早期に職場に馴染めるような工夫が必要です。
具体的には、メンター制度の導入、段階的な業務習得プラン、定期的な面談などが効果的です。また、入職理由と退職理由を定期的に分析し、採用戦略にフィードバックすることも重要です。

「入職後3ヶ月間は週1回の面談を実施し、不安や悩みを早期に解消することで、定着率が20%向上した」という成功事例もあります。
9. 地域ネットワークを活用する
同じ地域の介護事業者と連携し、採用活動や研修を共同で実施することで、コストと負担を分散させることができます。
例えば、合同就職説明会の開催、研修プログラムの共有、人材の相互紹介などが考えられます。地域全体で介護人材を育成・確保する視点が重要です。
「地域の5つの事業所で採用コストを分担し、共同で就職フェアを開催したところ、各事業所単独よりも多くの応募があった」という事例もあります。
10. 行政の支援制度を活用する
国や自治体が提供する介護人材確保のための支援制度を積極的に活用しましょう。
例えば、介護職員初任者研修費用助成金、社会福祉士資格取得費用助成金、介護支援専門員実務研修等受講費用補助金などがあります。また、府中市では「介護人材の確保や介護従事者の負担軽減につながる民間からのアイディアを募集」するなど、自治体独自の取り組みも増えています。
これらの制度を活用することで、採用コストの削減や人材育成の負担軽減につながります。
採用業務の負担軽減による3つのメリット
採用業務の負担を軽減することで、介護事業者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主な3つのメリットを紹介します。
1. 本来の介護業務に集中できる
採用業務の負担が軽減されれば、管理者やリーダーが本来の介護業務に集中できるようになります。その結果、サービスの質が向上し、利用者満足度の向上につながります。
介護の仕事は人の命と尊厳に関わる重要な仕事です。採用業務に時間を取られることなく、利用者一人ひとりに向き合う時間を確保することが、介護の本質を実現する上で非常に重要です。
「採用業務を外部委託したことで、利用者との関わりの時間が増え、サービスの質が向上した」という声も多く聞かれます。
2. 採用コストの削減につながる
効率的な採用活動を行うことで、求人広告費や人材紹介料などの採用コストを削減できます。また、適切な人材を採用できれば早期離職も防げるため、再採用のコストも削減できます。
例えば、関西地方の特別養護老人ホーム(従業員45名)では、採用業務を専門会社に委託したことで採用業務時間を50%削減し、結果的に採用コストも削減できたという事例があります。
3. 職場環境の改善と定着率向上
採用業務の負担軽減は、職員のワークライフバランスの改善にもつながります。残業時間の削減や休日の確保ができれば、職場環境が改善し、既存職員の定着率向上も期待できます。
「採用担当者を設置したことで、管理者の残業時間が月20時間減少し、職場全体の雰囲気も良くなった」という事例もあります。
職員が働きやすい環境を整えることは、新たな人材を引き付ける上でも重要なポイントです。好循環を生み出し、持続可能な組織づくりにつながります。
中小介護事業者が採用業務の負担軽減に成功した事例
実際に採用業務の負担軽減に成功した中小介護事業者の事例を紹介します。これらの事例から、自施設に合った取り組みのヒントを見つけてください。
デイサービスA施設の事例(従業員15名)
関東地方のデイサービスA施設では、採用業務を専門会社に委託することで、3ヶ月で介護職員5名の採用に成功しました。
それまでは施設長が採用業務を兼務していましたが、本来の業務に支障が出ていました。専門会社に委託したことで、中小事業者の特性をよく理解した採用戦略を立てることができ、大手にはない温かい職場環境を効果的にアピールできるようになりました。
「専門家のサポートを受けることで、自分たちでは気づかなかった施設の魅力を発見し、それを求人活動に活かせるようになった」と施設長は語っています。
特別養護老人ホームB施設の事例(従業員45名)
関西地方の特別養護老人ホームB施設では、採用管理システムの導入と採用業務の一部外部委託により、採用業務時間を50%削減することに成功しました。
応募者情報の管理や面接日程の調整などをシステム化し、求人原稿の作成や応募者へのアプローチは専門会社に委託。人事担当者は採用の方針決定と最終面接に集中できるようになりました。
「月額10万円の費用がかかるものの、それ以上の価値があった。採用業務の負担が大幅に軽減され、本来の業務に集中できるようになった」と人事担当者は評価しています。
グループホームC施設の事例(従業員8名)
九州地方のグループホームC施設では、業務の切り分けと高齢介護助手の活用により、2ヶ月で2名の採用に成功しました。
介護業務を専門的なケアと周辺業務に分け、周辺業務(清掃、洗濯、配膳など)は地域の元気な高齢者を「介護助手」として採用。介護職員は専門的なケアに集中できるようになり、職場環境が改善しました。
「小規模施設でも丁寧にサポートしていただけるので、細かい相談もしやすく非常に助かっています。中小だからこその魅力を理解し、それを活かした採用活動を展開してくれます」と管理者は話しています。
まとめ:持続可能な介護現場のために採用業務の負担軽減を
介護の採用業務における負担軽減は、単に業務効率化というだけでなく、介護サービスの質の向上や職場環境の改善、ひいては持続可能な介護現場の実現につながる重要な取り組みです。
本記事で紹介した10の方法は、どれも中小介護事業者が取り入れやすいものばかりです。自施設の状況に合わせて、できるところから始めてみましょう。
特に注目したいのは、採用業務の外部委託です。「かいごのおたすけ採用隊」のような中小介護事業者専門の採用課題解決サービスを利用することで、専門的なノウハウを活用しながら、内部リソースを本来の介護業務に集中させることができます。
採用業務の負担軽減は、介護職員の働きやすさにつながり、結果として利用者へのサービス向上にも寄与します。持続可能な介護現場の実現のために、ぜひ採用業務の見直しを検討してみてください。
介護人材の確保は今後も重要な課題であり続けますが、工夫次第で採用業務の負担を軽減し、効果的な人材確保を実現することは可能です。
詳細な採用課題解決サービスについては、かいごのおたすけ採用隊にお問い合わせください。専門スタッフが丁寧にご相談に応じます。