
介護職の人手不足問題と採用の現状
介護業界の人手不足は年々深刻化しています。令和元年10月の統計では高齢者の割合が28.4%に達し、2025年には約30%まで上昇すると予測されています。
一方で、介護職に従事する人材は慢性的に不足しており、多くの施設が採用に苦戦しているのが現状です。肉体的な負荷の高さや賃金の低さといったネガティブなイメージが先行し、なかなか応募が集まらない状況が続いています。
あなたの施設でも「毎年10名採用したいけれど、3~5名がやっと」という状況ではないでしょうか?
本記事では、介護職の応募者を効果的に増やすための12の方法とコツを紹介します。これらの施策を実践することで、採用数を大幅に増やし、人手不足の解消につなげることができるでしょう。
介護職の応募者を増やす12の効果的な方法
介護職の応募者を増やすためには、従来の採用手法だけでなく、新たなアプローチも取り入れる必要があります。ここでは、実践的で効果の高い12の方法を紹介します。

1. 介護職専門の求人媒体を活用する
一般的な求人サイトよりも、介護職に特化した求人媒体の方が効果的です。これらのサイトにアクセスするユーザーは、すでに介護職への志望度が高いため、応募につながりやすいのが特徴です。
おすすめの介護職専門求人サイトには、「ミラクス介護」「きらケア介護」「介護ワーク」「マイナビ介護職」「介護求人パーク」「e介護転職」などがあります。それぞれ特徴が異なるので、自施設の採用状況に合わせて選びましょう。
例えば、「きらケア介護」は職場の雰囲気や離職率、人間関係など求職者が気になる情報まで踏み込んで提供しているため、ミスマッチを防ぎやすいという特徴があります。
2. 求人検索エンジンを活用する
求人検索エンジンは、複数の求人サイトの情報を集約して表示してくれるサービスです。求職者は1つひとつの求人サイトを巡る手間が省け、多くの求人を比較検討できます。
求人検索エンジンには無料プランと有料プランがあり、有料プランを利用すると自施設の求人情報が目立つ位置に表示されるため、多くの求職者の目に留まりやすくなります。応募数アップが期待できる効果的な方法です。
3. 転職情報サイトを活用する
転職情報サイトは、人材紹介や派遣に比べて利用料が安いのが特徴です。うまく活用すれば、採用コストを抑えながら採用数を大幅にアップさせることができます。
ただし、人材紹介では紹介会社の担当者が応募者対応から入社までを一貫してフォローしてくれるのに対し、転職情報サイトでは法人の採用担当者が主体となって採用業務を進める必要があります。採用担当者自身がノウハウを身につけて実践していくことが大切です。
4. リスティング広告を活用する
GoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索したときに、検索結果の上位に表示される広告のことをリスティング広告と呼びます。ユーザーが検索するキーワードを選んで広告を出せるため、自施設が求める人材にピンポイントでアプローチできます。
「介護 求人 〇〇地域」などのキーワードで検索する求職者に対して、自施設の求人情報を効果的に届けることができるでしょう。

5. 地域密着型の紙媒体を活用する
タウン誌への求人広告掲載、チラシの新聞折り込み、ポスティングといった紙媒体を使った手法も、今なお有効な選択肢です。自施設の通勤圏内に住む人に集中的に情報を届けられるのがメリットです。
特に中高年層や地域に密着した生活をしている人材にアプローチする場合は、紙媒体が効果的です。ただし、最近はWebを中心に情報収集する求職者が増えているため、Webと併用することをおすすめします。
6. リファラル採用(社員紹介制度)を導入する
自施設の従業員に知人を紹介してもらう採用手法です。制度化している施設では、紹介者に謝礼金を出すケースもあります。採用コストが低く、自施設にマッチする人材を採用しやすいのが特徴です。
現職員が「ここで働くのはおすすめ」と思えるような職場環境づくりが前提となりますが、定着率も高くなる傾向があり、一石二鳥の効果が期待できます。
7. 魅力的な求人原稿を作成する
「やりがい」だけを強調した求人では、今の時代は応募が集まりにくくなっています。求職者が本当に知りたいのは、具体的な仕事内容や待遇、職場環境などの情報です。
求人原稿では、以下の点を明確に伝えましょう:
- 具体的な仕事内容(一日のスケジュール例など)
- 給与・賞与の詳細(実際の手取り額や昇給実績など)
- 休日・休暇制度(年間休日数、有給消化率など)
- 福利厚生(保険、退職金、住宅手当など)
- 教育・研修制度(キャリアアップの道筋)
- 職場の雰囲気(写真や動画も効果的)
また、中小施設ならではの魅力(アットホームな環境、意見が通りやすい、成長機会が多いなど)を具体的に伝えることで、大手施設との差別化を図りましょう。

8. 採用説明会を開催する
採用説明会は、求職者に直接施設の魅力を伝える絶好の機会です。特に介護業界未経験者や業界に不安を持つ求職者にとって、実際の職場や職員と接することで安心感を得られます。
説明会では、施設見学や現職員との交流の時間を設けると効果的です。また、説明会の開催地を複数設定することで、より広い範囲から応募者を集めることができます。
ある介護施設では、1つの原稿だけでIndeedに掲載していた時は応募がなかったものの、複数の地域で説明会を開催し、それぞれの説明会ごとに求人を掲載したところ、14日間で4件の応募を獲得できたという事例もあります。
9. 外国人材の採用を検討する
2025年春には制度が改正され、特定技能外国人が訪問介護サービスに従事できるようになりました。外国人材の採用は、人手不足解消の有効な手段の一つです。
外国人材を採用する際は、受け入れ可能な施設の要件や、外国人に求められる条件、受け入れ体制の整備などを事前に確認する必要があります。また、言語や文化の違いに配慮した研修プログラムの準備も重要です。
外国人材の採用に関しては、専門の支援サービスを利用することで、煩雑な手続きや体制整備の負担を軽減できます。
10. 柔軟な勤務形態を提供する
介護業界では24時間365日のサービス提供が必要ですが、それゆえに多様な勤務形態を提供できるという強みがあります。短時間勤務、週3日勤務、夜勤専従など、求職者のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を提案することで、応募のハードルを下げることができます。
特に育児や介護と両立したい人、副業として働きたい人など、フルタイムでは働けない潜在的な人材にアプローチする効果があります。

11. キャリアアップ支援を強化する
介護職のキャリアパスを明確に示し、成長機会を提供することは、応募者増加に効果的です。資格取得支援制度や研修プログラム、昇進の道筋を具体的に提示しましょう。
例えば、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士の資格取得費用の補助や、勉強会の開催、外部研修への参加支援などが考えられます。将来のキャリアビジョンを描ける環境は、特に若手人材の応募増加につながります。
12. 採用業務の専門家に依頼する
採用業務に十分なリソースを割けない場合は、専門の採用代行サービスの利用も検討しましょう。中小介護事業者向けの採用支援サービスも増えています。
例えば「かいごのおたすけ採用隊」は、中小介護事業者専門の採用課題解決サービスで、月額10万円(税別・契約期間3ヶ月〜)で採用業務を完全代行しています。初期費用無料、成果報酬無料、求人掲載費込みの明確な料金体系で、戦略的求人設計、積極的スカウト活動、業界ネットワーク活用の3つのアプローチで採用課題を解決します。
関東地方のデイサービスでは3ヶ月で5名の採用、関西地方の特別養護老人ホームでは採用業務時間を50%削減、九州地方のグループホームでは2ヶ月で2名の採用に成功した実績があります。
効果的な求人原稿作成のコツ
応募者を増やすためには、求人原稿の内容が非常に重要です。ここでは、応募が集まる求人原稿作成のコツを紹介します。
求職者の心に響く原稿を作成するには、相手の立場に立って考えることが大切です。

1. 具体的な数字を使用する
「充実した福利厚生」より「住宅手当月2万円支給」のように、具体的な数字を使うと説得力が増します。給与、賞与、休日数、有給取得率、勤務時間、残業時間など、できるだけ具体的な数字で示しましょう。
「年間休日120日以上」「賞与年2回(前年度実績4.2ヶ月分)」「有給取得率80%」など、数字で表せる情報は積極的に記載することで、求職者の不安を減らし、応募のハードルを下げることができます。
2. 差別化ポイントを明確にする
他の施設との違いを明確に示すことで、求職者の関心を引きます。特に中小介護施設の場合、大手にはない魅力をアピールすることが重要です。
例えば、「少人数制で利用者一人ひとりとじっくり向き合える環境」「意見が通りやすく、自分のアイデアを実践できる」「経営者と直接コミュニケーションがとれる」など、中小ならではの魅力を具体的に伝えましょう。
3. 写真や動画を活用する
職場の雰囲気や実際の業務風景を写真や動画で紹介することで、求職者は自分がそこで働くイメージを持ちやすくなります。特に施設内部や職員の様子、レクリエーションの様子などを掲載すると効果的です。
ただし、利用者のプライバシーには十分配慮し、必要に応じて許可を得るようにしましょう。
4. 応募者目線の言葉を使う
「〇〇ができる方」「〇〇な方歓迎」など、応募者を主語にした表現を使うことで、自分に向けられたメッセージとして受け取ってもらいやすくなります。
また、「あなたの経験を活かせます」「ライフスタイルに合わせて働けます」など、応募者にとってのメリットを具体的に伝えることも大切です。
「未経験でも安心の研修制度」「ブランクがあっても大丈夫」など、応募者の不安を取り除く言葉も効果的です。
採用面接での効果的なアプローチ
応募者を増やすことに成功しても、面接でのアプローチが適切でなければ、採用につながりません。ここでは、介護職の採用面接で効果的なアプローチを紹介します。
1. 人柄重視の質問を心がける
介護職では、スキルや経験だけでなく、利用者に寄り添える人柄が重要です。「困っている人を見たときどう行動するか」「コミュニケーションで大切にしていることは何か」など、人柄が分かる質問を心がけましょう。
また、「なぜ介護職に興味を持ったのか」「どのような介護を提供したいか」といった志望動機や価値観に関する質問も有効です。
2. 施設の魅力や理念を伝える
面接は応募者を評価する場であると同時に、施設の魅力を伝える絶好の機会です。施設の理念や大切にしている価値観、職場の雰囲気、教育体制などを具体的に伝えましょう。
特に中小施設の場合、大手にはない魅力(アットホームな環境、意見が反映されやすい、成長機会が多いなど)をアピールすることが重要です。
3. 不安や懸念に丁寧に対応する
応募者が持つ不安や懸念に対して、誠実かつ具体的に回答することが大切です。特に未経験者やブランクがある方は、「できるか不安」という気持ちを持っていることが多いです。
「研修制度が充実しているので安心してください」「先輩スタッフがしっかりサポートします」など、具体的な支援体制を伝えることで安心感を与えられます。
4. 迅速なフィードバックと次のステップの明示
面接後は、できるだけ早く結果を伝えるようにしましょう。長く待たせると、他の施設に流れてしまう可能性があります。
また、採用の場合は入職までの流れ、不採用の場合はその理由を丁寧に伝えることが、施設の評判につながります。不採用でも丁寧な対応をすれば、将来的に再応募してもらえる可能性もあります。
採用成功事例と効果的な施策
実際に介護職の採用に成功した事例から、効果的な施策を学びましょう。
1. デイサービスの採用成功事例
関東地方のあるデイサービス(従業員15名規模)では、「中小事業者の特性をよく理解した採用戦略」を導入し、3ヶ月で介護職員5名の採用に成功しました。
この施設では、大手にはないアットホームな職場環境を前面に出した求人原稿を作成し、複数の求人媒体に掲載。さらに、現職員からの紹介制度を導入し、紹介者と入職者の双方に特別手当を支給する仕組みを作りました。
また、未経験者向けの説明会を定期的に開催し、実際の業務内容や研修制度を丁寧に説明することで、介護業界に興味はあるものの一歩を踏み出せなかった層からの応募を増やすことに成功しました。
2. 特別養護老人ホームの採用成功事例
関西地方の特別養護老人ホーム(従業員45名規模)では、採用業務の専門サービスを導入することで、採用業務時間を50%削減しながら、質の高い人材を確保することに成功しました。
この施設では、採用業務の負担が大きく、本来の業務に集中できないという課題を抱えていました。専門サービスの導入により、求人戦略の策定から求人掲載、応募者対応、面接調整まで一貫してサポートを受けることで、効率的な採用活動を実現しました。
特に効果があったのは、施設の強みを活かした差別化戦略と、積極的なスカウト活動です。待ちの採用から攻めの採用に転換することで、優秀な人材を獲得することができました。
3. グループホームの採用成功事例
九州地方のグループホーム(従業員8名規模)では、小規模施設ならではの魅力を最大限に活かした採用戦略を展開し、2ヶ月で2名の採用に成功しました。
この施設では、「少人数だからこそ一人ひとりの意見が反映される」「アットホームな環境で働ける」「利用者との距離が近く、深い関係を築ける」といった小規模施設ならではの魅力を前面に出した求人活動を行いました。
また、地域密着型の採用活動として、地元の商業施設でのミニ説明会の開催や、地域情報誌への求人広告掲載なども効果的でした。小規模施設ならではの「顔の見える採用活動」が功を奏した事例です。
まとめ:介護職の応募者を増やすための戦略的アプローチ
介護職の応募者を増やすためには、複数の採用チャネルを活用し、施設の魅力を効果的に伝えることが重要です。本記事で紹介した12の方法を自施設の状況に合わせて取り入れ、戦略的な採用活動を展開しましょう。
特に中小介護事業者の場合は、大手にはない魅力を最大限に活かした差別化戦略が効果的です。アットホームな職場環境や、意見が反映されやすい風土、成長機会の豊富さなど、中小ならではの強みをしっかりとアピールしましょう。
また、採用活動に十分なリソースを割けない場合は、専門の採用支援サービスの活用も検討する価値があります。「かいごのおたすけ採用隊」のような中小介護事業者専門の採用課題解決サービスを利用することで、効率的かつ効果的な採用活動を実現できるでしょう。
介護人材の確保は一朝一夕にはいきませんが、継続的かつ戦略的なアプローチによって、着実に成果を上げることができます。本記事で紹介した方法を参考に、自施設に合った採用戦略を構築してください。
介護職の採用でお悩みなら、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。中小介護事業者の採用課題を熟知した専門家が、あなたの施設に最適な採用戦略をご提案します。