
介護職採用における面接日程調整の課題とは
介護業界の人手不足は年々深刻化している。厚生労働省の調査によれば、介護関係職種の有効求人倍率は3.41倍と高水準で推移しており、求職者に対して求人が豊富な状況が続いている。
このような状況下で、応募者を確実に面接に繋げられるかどうかが採用成功の鍵を握っているのだ。特に中小介護事業者にとって、日々の業務に追われながら採用活動を並行して行うのは容易ではない。
私が以前、特別養護老人ホームの採用担当をしていた頃のこと。応募者から連絡があり、面接日程を調整しようとしたものの、現場スタッフの予定確認や会議室の空き状況確認に時間がかかってしまった。ようやく候補日を提示したときには、すでに応募者は他施設の内定を受けていたのだ。
この経験から、面接日程調整の迅速さと効率性が採用成功に直結することを痛感した。
では、どうすれば面接日程調整を効率化できるのだろうか?
面接日程調整の効率化がもたらす3つのメリット
面接日程調整の効率化は、単なる業務改善にとどまらず、採用活動全体の質を高める効果がある。具体的には、以下の3つのメリットが挙げられる。

まず第一に、応募者の離脱防止につながる。介護業界の人材獲得競争が激化する中、応募から面接までのスピードは極めて重要だ。日程調整に時間がかかると、その間に応募者が他施設の選考を進めてしまうリスクが高まる。
ある介護施設では、面接日程調整の効率化により応募者の面接辞退率が30%も減少した事例がある。応募者にとって、スムーズな対応は「この施設は組織的にしっかりしている」という好印象にもつながるのだ。
あなたの施設では、応募から面接設定までどれくらいの時間がかかっていますか?
第二のメリットは、採用担当者の業務負担軽減だ。介護現場では慢性的な人手不足により、採用担当者が現場業務と採用業務を兼任していることが多い。日程調整の往復メールや電話対応に費やす時間を削減できれば、本来の業務に集中できる時間が増える。
実際に、デイサービスを運営するA事業所では、面接日程調整ツールを導入したことで、採用担当者の業務時間が週あたり約5時間も削減されたという。
第三に、採用プロセス全体の短縮化が実現する。面接日程調整がスムーズになれば、採用決定までの期間を大幅に短縮できる。介護業界では人材確保のスピードが重要であり、採用プロセスの短縮化は競合他社に先んじて優秀な人材を獲得するための重要な戦略となる。
これらのメリットを実現するためには、どのような具体的な方法があるのだろうか。
面接日程調整を効率化する5つの具体的テクニック
1. 候補日の事前ブロック
面接日程調整の最初のステップは、面接官や会議室の予定を事前に確保しておくことだ。週に2〜3日、特定の時間帯を面接用にブロックしておけば、応募者との調整がスムーズになる。
私が関わった中規模の介護施設では、毎週火曜日と木曜日の午後2時から5時を面接時間枠として確保していた。これにより、応募があった際にすぐに候補日を提示できるようになり、応募者からの返答も迅速になった。

事前ブロックのポイントは、面接に関わる全スタッフ(施設長、現場リーダー、採用担当者など)の予定を一元管理することだ。Googleカレンダーなどの共有カレンダーを活用すれば、リアルタイムで全員の予定が確認できる。
2. 日程調整ツールの活用
日程調整ツールは、採用担当者と応募者の間で何度もメールや電話をやり取りする手間を大幅に削減してくれる。代表的なツールには「Calendly」「TimeTree」「Chouseisan(調整さん)」などがある。
これらのツールを使えば、空き時間をリスト化したURLを応募者に送信し、応募者自身に都合の良い時間を選んでもらうことができる。選択された時間は自動的にカレンダーに反映されるため、二重予約の心配もない。
特別養護老人ホームB施設では、日程調整ツールの導入により、面接設定までの時間が平均2日から数時間に短縮された。この迅速な対応が功を奏し、内定承諾率が1.5倍に向上したという事例もある。
あなたはまだ手動で日程調整をしていますか?
3. 応募者対応の自動化
応募があった際の初期対応を自動化することで、応募者を待たせることなく選考プロセスを進められる。具体的には、応募受付の自動返信メール設定、選考ステータスに応じたメールテンプレートの作成、リマインダー機能の設定などが効果的だ。

自動返信メールには「24時間以内に担当者から連絡します」と明記し、応募者に次のステップを明確に伝えることが重要だ。また、面接日前日には自動リマインダーを送信することで、面接のドタキャンを防止することもできる。
グループホームを運営するC法人では、応募者対応の自動化により、採用担当者の業務負担が大幅に軽減されただけでなく、応募者からの「対応が早くて好印象」という声も増えたという。
4. モバイルファースト対応
現代の求職者の多くは、スマートフォンを主要なコミュニケーションツールとして使用している。特に若い世代の介護職志望者は、PCよりもスマートフォンでの情報収集や応募が主流だ。
そのため、面接日程調整のプロセスもモバイルファーストで設計することが重要になる。具体的には、スマートフォンで見やすいメールデザイン、タップで簡単に日程選択できるインターフェース、LINEなどのメッセージングアプリの活用などが効果的だ。
介護老人保健施設D施設では、LINEを活用した面接日程調整を導入したところ、応募者からの返信速度が平均12時間から3時間に短縮されたという。
5. 面接実施方法の柔軟化
面接の実施方法を柔軟化することも、日程調整の効率化につながる。従来の対面面接だけでなく、オンライン面接や電話面接などの選択肢を用意することで、応募者の都合に合わせた面接設定が可能になる。
特に地方の介護施設や、遠方からの応募者がいる場合は、初回面接をオンラインで実施することで、応募者の負担を減らし、より多くの候補者と面接できる可能性が広がる。
訪問介護サービスを展開するE社では、初回面接をオンラインで実施する選択肢を設けたことで、応募者の面接参加率が15%向上したという実績がある。
中小介護事業者向け面接日程調整の自動化導入事例
実際に面接日程調整の効率化に成功した中小介護事業者の事例を見てみよう。

関東地方のデイサービス(従業員15名)の場合
この施設では、採用担当者が現場業務と兼任していたため、応募者への連絡が遅れがちになり、面接辞退率が高いことが課題だった。そこで、以下の取り組みを実施した。
- 週2日(火・金)の午後を面接時間枠として事前確保
- 日程調整ツール「Calendly」の導入
- 応募受付時の自動返信メール設定
- 面接前日の自動リマインダー送信
その結果、応募から面接設定までの時間が平均3日から1日以内に短縮され、面接辞退率が42%から15%に減少。3ヶ月で5名の採用に成功した。
採用担当者からは「これまで日程調整に費やしていた時間を、面接の質向上や採用後のフォローアップに使えるようになった」という声が聞かれた。
関西地方の特別養護老人ホーム(従業員45名)の場合
この施設では、複数の採用担当者が個別に応募者とやり取りしていたため、情報の一元管理ができておらず、時に二重予約や連絡漏れが発生していた。そこで、以下の改善を行った。
- 採用管理システムの導入による応募者情報の一元管理
- 共有カレンダーを活用した面接日程の可視化
- LINE公式アカウントを活用した日程調整
- 面接官の事前スケジュールブロック(月・水・金の午後)
これらの取り組みにより、採用業務時間が約50%削減され、応募者からの「対応が早くて良い印象を受けた」という評価も増加した。また、採用担当者間の情報共有がスムーズになり、採用プロセス全体の質が向上した。
九州地方のグループホーム(従業員8名)の場合
小規模施設ならではの課題として、施設長が採用から現場業務まですべてを担当しており、応募者対応に十分な時間を割けないことが問題だった。そこで、以下の対策を講じた。
- 「調整さん」を活用した日程調整の自動化
- 初回面接をオンラインで実施する選択肢の追加
- 面接可能時間の固定化(毎週木曜午後と土曜午前)
- 採用代行サービスの部分的活用(初期対応と日程調整のみ)
これらの改善により、施設長の採用業務負担が大幅に軽減され、2ヶ月で2名の採用に成功。小規模施設ながら、効率的な採用活動を実現した。
面接日程調整の効率化を支援するサービス・ツール
面接日程調整の効率化を実現するためのサービスやツールは数多く存在する。ここでは、介護事業者に特に適したものを紹介しよう。
日程調整ツール
- Calendly:空き時間を登録しておくと、応募者が都合の良い時間を選択できる。Google カレンダーとの連携も可能。
- 調整さん:複数の候補日時を提示し、応募者が参加可能な日時にチェックを入れる形式。無料で利用できる。
- TimeTree:チーム内でのスケジュール共有に優れており、面接官間の予定調整がスムーズ。
採用管理システム
- HRMOS採用:応募者情報の管理から面接日程調整、評価管理まで一元化できる。
- JobSuite:中小企業向けの採用管理システムで、応募者とのコミュニケーション機能が充実。
- HERP:直感的な操作性と柔軟なカスタマイズ性が特徴。小規模事業者にも使いやすい。

採用代行サービス
採用業務の一部または全部を外部に委託するサービスも増えている。特に中小介護事業者向けに特化したサービスとして、「かいごのおたすけ採用隊」がある。
このサービスは、中小介護事業者専門の採用課題解決サービスで、月額10万円(税別・契約期間3ヶ月〜)で採用業務を完全代行。初期費用無料、成果報酬無料、求人掲載費込みの明確な料金体系を提供している。
サービス内容には、求人戦略の策定・実行、求人媒体への掲載代行、積極的スカウト活動、応募者対応・管理、面接日程調整代行、給与・条件交渉サポート、人材紹介会社との連携、月次レポート提供が含まれている。
特に面接日程調整代行は、採用担当者の大きな負担軽減につながるサービスだ。応募者との連絡調整、面接スケジュール管理を代行し、スムーズな選考をサポートしてくれる。
面接日程調整効率化の導入ステップ
面接日程調整の効率化を自社で導入する場合、どのようなステップで進めれば良いだろうか。以下に、導入の流れを紹介する。
ステップ1:現状分析と課題の明確化
まずは現在の面接日程調整プロセスを分析し、どこにボトルネックがあるかを明確にしよう。
- 応募から面接設定までの平均所要時間
- 面接辞退率とその理由
- 採用担当者が日程調整に費やしている時間
- 現在のプロセスで発生している問題点(連絡漏れ、二重予約など)
これらを数値化することで、改善後の効果測定も容易になる。
ステップ2:最適なツール・サービスの選定
自社の規模や課題に合わせて、最適なツールやサービスを選定しよう。
- 小規模施設(10名以下):無料の日程調整ツール(調整さんなど)の活用
- 中規模施設(11〜50名):Calendlyなどの有料ツールや採用管理システムの一部機能
- 大規模施設(51名以上):採用管理システムの全面導入や採用代行サービスの活用
予算や導入の手間も考慮して選定することが重要だ。
ステップ3:運用ルールの策定
ツールやサービスを導入しても、運用ルールが明確でなければ効果は半減する。以下のようなルールを策定しよう。
- 面接可能日時の設定ルール(誰が、いつ、どのように設定するか)
- 応募者への初期対応の標準化(返信テンプレート、返信期限など)
- 面接確定後のフロー(リマインダー送信、面接官への共有など)
- キャンセル・変更時の対応手順
これらのルールを文書化し、関係者全員で共有することが大切だ。
ステップ4:試験導入と効果測定
いきなり全面導入するのではなく、まずは1〜2ヶ月の試験期間を設けて効果を測定しよう。
- 応募から面接設定までの時間短縮効果
- 面接辞退率の変化
- 採用担当者の業務時間削減効果
- 応募者からのフィードバック
これらの指標を測定し、導入前と比較することで効果を可視化できる。
ステップ5:本格導入と継続的改善
試験導入の結果を踏まえて、必要な調整を行った上で本格導入を進める。導入後も定期的に効果を測定し、継続的な改善を行うことが重要だ。
特に応募者からのフィードバックは貴重な情報源となるので、面接後のアンケートなどで積極的に収集しよう。
まとめ:面接日程調整の効率化で採用成功率を高めよう
介護業界の人手不足が深刻化する中、応募者を確実に面接につなげることは採用成功の重要な鍵となる。面接日程調整の効率化は、応募者の離脱防止、採用担当者の業務負担軽減、採用プロセス全体の短縮化という3つの大きなメリットをもたらす。
効率化のための具体的な方法としては、候補日の事前ブロック、日程調整ツールの活用、応募者対応の自動化、モバイルファースト対応、面接実施方法の柔軟化などが効果的だ。これらを組み合わせることで、より効率的な面接日程調整が実現できる。
また、採用業務の負担が大きい中小介護事業者には、「かいごのおたすけ採用隊」のような採用代行サービスの活用も有効な選択肢となる。月額定額で採用業務を完全代行してくれるため、本来の介護業務に集中できるメリットは大きい。
面接日程調整の効率化は、一見些細な改善に思えるかもしれないが、採用活動全体の成功率を大きく左右する重要な要素だ。ぜひ自施設の現状を見直し、効率化に向けた一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
介護人材の確保は、これからの介護事業運営において最重要課題の一つである。面接日程調整の効率化を通じて、貴重な応募者を逃さない採用体制を構築し、安定した人材確保を実現しよう。
採用業務の効率化でお悩みの方は、中小介護事業者専門の採用課題解決サービス「かいごのおたすけ採用隊」にぜひご相談ください。面接日程調整の代行を含む、採用業務の完全サポートで、あなたの施設の人材確保をバックアップします。