
介護施設が直面する採用課題とその背景
介護業界の採用市場は年々厳しさを増しています。2025年には国民の3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されているにもかかわらず、介護人材の供給は需要に追いついていない現状があります。
「うちの施設だけ人が集まらない」と悩んでいませんか?
実は、あなたの施設だけではありません。介護労働安定センターの調査によれば、2019年時点で介護サービス事業所の65.3%が人手不足を感じています。これは業界全体が抱える構造的な問題なのです。

私が10年前に介護業界に入った頃と比べても、採用環境は一変しました。かつては求人を出せば応募が来ていた時代。今は複数の媒体に掲載しても反応がない日々が続くことも珍しくありません。
介護業界が人材不足に陥っている主な理由は以下の3つです。
- 人材獲得競争の激化:介護業界内だけでなく、他業種とも求職者を奪い合う状況
- 労働条件の問題:他産業と比較して給与水準や労働環境に課題がある
- 労働人口の減少:少子化により若年層の絶対数が減少している
特に中小規模の介護施設では、大手法人と比べて知名度や採用予算で不利な立場に立たされがちです。ある特別養護老人ホームの施設長は「大手チェーンには広告費でも給与水準でも太刀打ちできない」と嘆いていました。
でも、諦めるのはまだ早い。
採用成功への第一歩:自施設の魅力を再発見する
採用を成功させる第一歩は、自施設の「本当の魅力」を見つめ直すことです。大手にはない中小施設ならではの強みを活かした採用戦略が必要なのです。
「うちには特に誇れるものがない」と思っていませんか?
実は、あなたの施設にも必ず独自の魅力があります。それを発見し、言語化し、求職者に伝えることが採用成功の鍵となります。中小介護施設だからこそ持つ強みには、アットホームな職場環境、意思決定の速さ、個人の意見が反映されやすい組織文化などが挙げられます。

私が関わった関西地方のある小規模デイサービスでは、「スタッフの趣味や特技を活かしたレクリエーション」を求人票の目立つ位置に記載したところ、「自分の好きなことを仕事に活かせる」と感じた応募者が増え、3ヶ月で4名の採用に成功しました。
自施設の魅力を発見するためのワークとして、以下の質問に答えてみてください。
- 現在働いているスタッフが「この施設で働いて良かった」と感じる瞬間は?
- 過去に長く勤めてくれたスタッフの共通点は?
- 利用者やその家族から特に感謝されるのはどんな時?
- 地域や他施設と比較して、独自に取り組んでいることは?
これらの問いに対する答えを集めると、自施設ならではの魅力が見えてきます。その魅力を求人票や面接で伝えることで、「この施設で働きたい」と思ってもらえる確率が高まるのです。
あなたの施設の魅力は、意外と身近なところに隠れているかもしれません。
求人戦略の見直し:効果的な募集方法とは
魅力を発見したら、次はそれを効果的に伝える求人戦略の構築です。多くの介護施設が「求人を出しても応募が来ない」と悩んでいますが、その原因は募集方法にあるかもしれません。
求人戦略を見直す際の重要なポイントは、「待ちの採用」から「攻めの採用」への転換です。
介護業界の有効求人倍率は3.02倍(2018年7月時点)と、全体の1.63倍と比較しても非常に高い水準です。この状況下では、求人票を出して待っているだけでは優秀な人材の確保は難しいでしょう。
採用手法の選択と組み合わせ
介護施設の採用手法は大きく分けて5つあります。それぞれの特徴を理解し、自施設に合った方法を選びましょう。
- 直接募集:自社サイトやSNSでの募集。費用は抑えられるが認知度が必要
- 求人サイト:多くの人の目に触れるが、他の求人に埋もれる可能性も
- 人材紹介サービス:条件に合う人材を紹介してもらえるが費用が高い
- ハローワーク:無料で利用できるが情報量に制限がある
- リファラル採用:現職員からの紹介。定着率が高いがコントロールが難しい
どれか一つに絞るのではなく、複数の手法を組み合わせることで効果が高まります。例えば、ハローワークと求人サイトを併用し、同時に職員からの紹介も促すといった方法です。

ある九州地方のグループホームでは、求人サイトだけでなく、地域の介護職員初任者研修の講座に施設長自らが出向いて施設の魅力を伝える時間をもらったところ、2ヶ月で2名の採用に成功しました。
求人原稿の工夫
求人原稿は単なる条件の羅列ではなく、「この施設で働く意味」を伝えるものであるべきです。特に重視したいのは以下の点です。
- 施設の理念や大切にしている価値観を具体的に
- 実際に働いているスタッフの声や日常の様子
- 成長できる環境や将来のキャリアパス
- 働きやすさを支える具体的な制度や取り組み
「介護スタッフ募集」という平凡なタイトルより、「利用者の笑顔を一緒に創る仲間を募集」といった、施設の想いが伝わるタイトルの方が目を引きます。
求人原稿は定期的に見直し、応募状況に応じて改善していくことが大切です。反応が薄い場合は、別の切り口で施設の魅力を伝えてみましょう。
採用対象の拡大:未経験者・シニア層・外国人材の活用
人材不足が深刻化する中、採用対象を広げることも重要な戦略です。従来の「経験者・有資格者」だけにこだわらず、多様な人材に目を向けてみましょう。
「未経験者は教育が大変」「シニアは体力的に厳しいのでは」と思っていませんか?
確かに懸念点はありますが、それを上回るメリットも多いのです。視野を広げることで、思わぬ人材との出会いがあるかもしれません。
未経験者採用のポイント
介護職を希望する人の中で最も多いのは、実は未経験からのチャレンジを考えている方々です。彼らが介護職を選ばない理由の第一位は「スキル不足への不安」。この不安を解消する取り組みが採用成功につながります。
- 段階的な研修プログラムの明示
- 先輩スタッフによるマンツーマン指導体制
- 資格取得支援制度の充実
- 失敗しても大丈夫な組織文化の醸成
東京のあるデイサービスでは、「介護の経験より、人と接することが好きな方」という表現で未経験者向けの求人を出したところ、接客業からの転職希望者が増え、人柄重視の採用に成功しました。
シニア層の活用
定年退職後も働く意欲のあるシニア層は、貴重な人材の宝庫です。特に以下のような強みがあります。
- 人生経験の豊富さが利用者との共感を生む
- 責任感が強く、安定した勤務が期待できる
- 同世代の利用者とのコミュニケーションがスムーズ
シニア層の採用では、勤務時間の柔軟性や体力面への配慮が鍵となります。週2〜3日の短時間勤務から始められるポジションを用意することで、応募のハードルを下げられます。

北海道の特別養護老人ホームでは、「人生の先輩だからこそできる介護があります」というメッセージでシニア向け求人を出したところ、60代の応募者が増え、利用者からも「同世代の話が通じて嬉しい」と好評でした。
外国人材の受け入れ
政府も推進している外国人材の活用は、人材不足解消の一助となります。ただし、言語や文化の違いに配慮した受け入れ体制の整備が必須です。
- 日本語学習支援の仕組み
- 生活面でのサポート体制
- 文化の違いを尊重する組織風土
- キャリアパスの明確化
外国人材の採用は、単に人手不足を解消するだけでなく、多様な視点が入ることで組織に新たな風を吹き込む効果も期待できます。
どのような人材を採用するにせよ、「この人と一緒に働きたい」と思える人柄を重視することが、長期的な定着につながります。スキルは教育で補えますが、価値観の共有は簡単ではないからです。
面接・選考プロセスの改善:ミスマッチを防ぐために
せっかく応募があっても、選考プロセスでつまずいては意味がありません。面接は施設と求職者がお互いを知る貴重な機会です。この場をいかに有効活用するかが採用成功のカギとなります。
面接官の第一印象で応募者の7割が入職意欲を決めるというデータもあります。
私が関わった採用コンサルティングでは、面接の改善だけで内定承諾率が1.5倍に向上した施設もありました。それほど面接は重要なのです。
面接前の準備
良い面接は準備から始まります。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 応募者の履歴書・職務経歴書を事前に熟読
- 聞きたいポイントをリスト化
- 施設の強みや特徴を改めて整理
- 面接官の役割分担(複数で行う場合)
また、面接場所の環境も重要です。清潔感のある空間で、プライバシーが守られる場所を選びましょう。可能であれば、実際の職場も見学してもらうと良いでしょう。
効果的な質問と傾聴
面接では、単に経験や資格を確認するだけでなく、その人の価値観や仕事への姿勢を知ることが大切です。
「前職の良かった点・改善点は何ですか?」
この質問一つとっても、答え方で多くのことがわかります。批判的な回答が多い人は、職場環境への不満が出やすい可能性があります。一方、どんな環境でも良い点を見つけられる人は、適応力が高いと言えるでしょう。

また、「この仕事を通じて実現したいことは何ですか?」といった質問は、応募者の内発的動機を知る手がかりになります。給与や条件だけでなく、仕事そのものにやりがいを見出せる人は長く働いてくれる可能性が高いでしょう。
質問をするだけでなく、応募者の話をしっかり「聴く」姿勢も重要です。うなずきや相づちで話しやすい雰囲気を作りましょう。
施設の魅力と現実のバランス
面接では施設の良い面だけを伝えたくなりますが、現実とのギャップが大きすぎると、入職後のミスマッチにつながります。
理想と現実のバランスを取った情報提供が大切です。例えば、「業務量が多い時期もありますが、チームでカバーし合う文化があります」といった伝え方なら、課題と解決策の両方が伝わります。
また、応募者からの質問には誠実に答えましょう。「答えにくい質問にも正直に向き合ってくれる」という印象は、信頼関係の構築につながります。
面接の最後には必ず次のステップを明確に伝え、できるだけ早く結果連絡をすることも大切です。待たされる時間が長いほど、他の施設への応募や内定を検討する可能性が高まります。
入職後のフォロー:定着率を高める秘訣
採用活動の成功は、内定承諾でゴールではありません。せっかく採用した人材が早期に退職してしまっては、採用コストも時間も無駄になってしまいます。
介護業界の離職率は全産業平均より高く、特に入職1年未満の早期離職が課題となっています。
入職後のフォローを充実させることで、定着率を大幅に向上させることができます。私が支援した関東地方のデイサービスでは、入職後フォロー体制の見直しにより、1年以内の離職率を15%から5%に改善した実績があります。
オリエンテーションの充実
入職直後の印象は、その後の定着に大きく影響します。初日から「ここで働きたい」と思ってもらうためのオリエンテーションを設計しましょう。
- 施設の理念や歴史を丁寧に説明
- 全スタッフへの紹介と歓迎の雰囲気づくり
- 業務マニュアルや連絡体制の明確化
- 質問しやすい環境の整備
特に大切なのは「あなたを迎えられて嬉しい」というメッセージを伝えること。歓迎会や歓迎ボードなど、ちょっとした工夫が新入職員の安心感につながります。
メンター制度の導入
新人が最も不安を感じるのは、「分からないことを誰に聞けばいいか分からない」という状況です。メンター制度は、そんな不安を解消する効果的な方法です。
メンターは直属の上司とは別の先輩スタッフが担当し、業務上の疑問だけでなく、職場環境への適応や精神的なサポートも行います。定期的な面談の機会を設け、悩みや課題を早期に発見・解決することが大切です。

ある特別養護老人ホームでは、入職3年目以上のスタッフがメンターとなり、週1回の「何でも相談タイム」を設けています。この取り組みにより、「一人で悩まなくていい」という安心感が生まれ、定着率が向上しました。
成長機会の提供
人は成長を実感できると、仕事へのモチベーションが高まります。特に若手スタッフは、キャリアアップの道筋が見えることで長期的な就業意欲が高まります。
- 段階的なスキルアップ研修
- 資格取得支援制度
- 外部研修への参加機会
- 施設内での役割拡大
成長機会の提供は、単なる福利厚生ではなく「この人に長く活躍してほしい」というメッセージでもあります。スタッフ一人ひとりの成長プランを一緒に考える機会を持ちましょう。
「この施設で働き続けたい」と思ってもらうためには、日々の小さな配慮の積み重ねが大切です。誕生日カードや感謝の言葉など、人間関係を大切にする文化が定着を支えます。
採用業務の効率化:限られたリソースを最大活用
中小介護施設では、専任の採用担当者を置くことが難しいケースがほとんどです。限られた人員と時間の中で、いかに効率的に採用活動を進めるかが課題となります。
「採用に時間を取られて本業がおろそかになる」というジレンマを感じていませんか?
実は、採用業務の一部を外部に委託したり、テクノロジーを活用したりすることで、大幅な効率化が可能です。
採用業務の外部委託
採用業務のすべてを自前で行う必要はありません。以下のような業務は外部委託を検討する価値があります。
- 求人原稿の作成・掲載
- 応募者対応・スケジュール調整
- 書類選考の一次フィルタリング
- 採用市場のリサーチ
中小介護事業者専門の採用代行サービスを利用すれば、業界特性を理解したプロフェッショナルのサポートを受けられます。例えば「かいごのおたすけ採用隊」のような専門サービスは、月額10万円で採用業務を完全代行し、初期費用無料、成果報酬無料のシンプルな料金体系で中小施設の採用をサポートしています。
採用管理システムの活用
応募者情報の管理や選考プロセスの進捗管理は、エクセルやノートで行うと煩雑になりがちです。採用管理システム(ATS)を導入することで、以下のようなメリットが得られます。
- 応募者情報の一元管理
- 選考ステータスの可視化
- 面接スケジュールの自動調整
- 応募者とのコミュニケーション履歴管理
無料や低コストで利用できるシステムも増えているので、施設の規模や採用頻度に合わせて選びましょう。
採用業務の標準化
採用業務を「その都度考える」のではなく、標準的なプロセスとして確立することで、効率と質の両方が向上します。
- 採用基準の明文化
- 面接質問リストの作成
- 評価シートの標準化
- 内定から入職までのチェックリスト
これらのツールを一度作成しておけば、採用の度に一から考える必要がなくなります。また、採用に関わるスタッフが増えても、一定の質を保つことができます。
採用業務の効率化は、単に手間を減らすだけでなく、本来業務に集中できる時間を増やし、結果として利用者サービスの質向上にもつながります。
採用成功のための12の実践ポイント
ここまで介護施設の採用について様々な角度から見てきましたが、最後に実践的な12のポイントにまとめてみましょう。これらは私が100以上の介護施設の採用支援を通じて効果を実感してきた具体策です。
- 自施設の強みを徹底的に分析する
- 現スタッフへのインタビューや退職者の声も参考に、大手にはない中小施設ならではの魅力を言語化しましょう。
- 求人原稿は「条件」より「想い」を伝える
- 給与や勤務時間だけでなく、なぜその仕事が意味あるのか、どんな成長ができるのかを伝えましょう。
- 複数の採用チャネルを活用する
- 求人サイト、ハローワーク、SNS、職員紹介など、複数の経路で人材にアプローチしましょう。
- 採用基準を明確にする
- 「どんな人に来てほしいのか」を具体的に言語化し、採用に関わる全員で共有しましょう。
- 面接は「選ぶ場」ではなく「互いを知る場」と捉える
- 一方的な質問ではなく、対話を通じて相互理解を深める機会にしましょう。
- 現場見学・体験の機会を設ける
- 可能であれば、実際の職場を見学したり、簡単な業務を体験したりする機会を提供しましょう。
- 応募者への迅速な対応を心がける
- 書類選考や面接結果は、できるだけ早く連絡しましょう。待たせるほど他の選択肢に目が向きます。
- 入職後のフォロー体制を充実させる
- メンター制度や定期面談など、新入職員が安心して働ける環境を整えましょう。
- 経験・資格にこだわりすぎない
- 人柄や成長意欲を重視し、未経験者やシニア層など幅広い人材に目を向けましょう。
- 採用業務の一部を外部委託する
- すべてを自前でやろうとせず、専門家のサポートを活用しましょう。
- 採用と定着を一体的に考える
- 採用は入職でゴールではなく、定着してこそ成功です。採用時から定着策を考えましょう。
- 採用活動を継続的に行う
- 人手が足りている時こそ、余裕をもって良い人材を見つける絶好のチャンスです。
これらのポイントをすべて一度に実践するのは難しいかもしれません。まずは自施設の状況に合わせて2〜3つから始め、徐々に拡げていくことをおすすめします。
採用は一朝一夕に成果が出るものではありませんが、継続的な取り組みが必ず実を結びます。
あなたの施設に最適な人材が見つかり、共に成長していける関係が築けることを願っています。
まとめ:持続可能な採用体制の構築に向けて
介護業界の人材不足は今後も続くと予想される中、「採用できた」で終わるのではなく、持続可能な採用体制を構築することが重要です。
本記事で紹介した12の秘訣は、単発の採用テクニックではなく、組織全体の魅力向上と採用プロセスの最適化を目指すものです。
最後に、採用成功のための3つの柱を確認しておきましょう。
- 魅力ある職場づくり – 採用の前提となる、働きたいと思える環境の整備
- 効果的な情報発信 – 施設の魅力を求職者に届けるための戦略的アプローチ
- 効率的な採用プロセス – 限られたリソースで最大の効果を生み出す仕組み
これらを総合的に進めることで、「人が集まらない」という悩みから解放され、理想の人材と出会える確率が高まります。
介護の仕事は、人の人生に寄り添う尊い職業です。その価値を理解し、共感してくれる人材との出会いが、より良いケアの提供につながります。
採用に悩むすべての介護施設の皆様に、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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