
介護業界の人材不足は深刻化の一途をたどっている
介護業界の人材不足は、もはや危機的な状況だ。2025年3月の有効求人倍率は職業計全国平均1.16倍の約3.5倍にあたる3.97倍に達している。この数字が意味するものは何か?
それは、求人を出しても人が集まらない現実だ。介護の現場では日々、人手不足による過酷な労働環境が続いている。そして、この状況は今後さらに悪化する可能性が高い。

さらに厚生労働省が2023年12月に公表した「介護職員数の推移の更新(令和5年分)」によれば、令和5年10月1日時点の介護職員数は約212.6万人で、対前年2.9万人(1.3%)の減少となった。これまでの右肩上がりの増加から、大きな転換点を迎えているのだ。
このような状況の中、介護施設が生き残るためには、採用力を飛躍的に高める必要がある。単に「人を集める」だけでなく、「定着させる」戦略も同時に考えなければならない。
では、具体的にどうすれば採用力を高められるのか?
この記事では、2025年の最新状況を踏まえた、介護施設の採用力を飛躍的に高める9つの戦略を紹介する。人材確保に悩む介護施設経営者や人事担当者必見の内容だ。
戦略1:差別化された採用ブランディングの構築
採用市場で埋もれないためには、施設の独自性を明確に打ち出す必要がある。あなたの施設ならではの魅力は何だろうか?
大手介護施設との差別化ポイントを明確にし、中小事業者ならではの魅力を最大限に活用することが重要だ。アットホームな職場環境、個人の成長機会、地域密着型サービスの価値など、大手にはない魅力を徹底的に掘り下げよう。これらは単なるキャッチフレーズではなく、実際に施設で実践されている価値観や取り組みであるべきだ。

採用ブランディングの構築には、まず自施設の強みと弱みを客観的に分析することから始めよう。現場スタッフへのヒアリングは非常に有効だ。特に、長期勤続者や異業種からの転職者の声は貴重な情報源となる。
秋田県の「株式会社横堀温泉紫雲閣」では、スタッフ数名から長期在籍する理由やPRできるポイントについてアンケート取材を実施。特に異業種からの転職者については同社への志望理由と前職の経験が活かされているかなどについても聞き取りを行った。この取り組みにより、自社のPRポイントを明確にし、求人票に反映させることで応募者を獲得することに成功している。
あなたの施設でも、今すぐ現場スタッフに「なぜこの施設で働き続けているのか?」「この施設の良いところは?」といった質問をしてみてはどうだろう。そこから見えてくる本当の魅力が、採用ブランディングの核となるはずだ。
戦略2:求人情報の戦略的設計と多チャネル展開
求人情報は単なる「募集のお知らせ」ではない。応募者の心を動かす「営業ツール」だ。どれだけ素晴らしい職場環境があっても、それが求人情報に反映されていなければ意味がない。
まず、キーワード戦略を意識した求人票の作成が重要だ。応募者が検索するであろうキーワードを意識して、タイトルや本文に適切に配置する。「介護 未経験」「介護 資格取得支援」「介護 働きやすい」など、応募者が実際に検索しそうなキーワードを盛り込もう。
また、求人情報は複数のチャネルで展開することが効果的だ。独立行政法人福祉医療機構の調査によると、特別養護老人ホームでは新卒採用で82.6%、中途採用で96.6%が「ハローワーク」を活用している。しかし、採用に最も効果があったのは、新卒では「学校訪問(就職課等への働きかけ)」、中途では「ハローワーク」という結果が出ている。

つまり、ハローワークだけに頼るのではなく、教育機関との連携や、SNS、自社ウェブサイト、介護専門の求人サイトなど、複数のチャネルを組み合わせることが重要なのだ。
長崎県の取り組みでは、「魅力的な求人票の書き方」「採用に向けたホームページの作り方」などをテーマにしたガイドブックを作成し、介護事業所の採用力向上を支援している。特に五島圏域では、移住者向けに島や介護事業所の魅力、介護職員の1日などをまとめたパンフレットを作成するなど、ターゲットを明確にした情報発信を行っている。
あなたの施設でも、応募者のペルソナ(年齢、経験、価値観など)を設定し、そのペルソナに響く言葉で求人情報を作成してみよう。「未経験歓迎」「資格取得支援あり」「ワークライフバランス重視」など、応募者が求める情報を前面に出すことで、反応率が大きく変わるはずだ。
戦略3:積極的なスカウティングとダイレクトリクルーティング
待ちの採用から攻めの採用へ。これが今後の介護施設に求められる発想の転換だ。
積極的なスカウティングとは、求職者を待つのではなく、こちらから積極的にアプローチすることを意味する。特に介護業界では、有効求人倍率が高く、応募を待っているだけでは人材確保が難しい状況だ。
具体的な方法としては、転職サイトやSNSを活用したダイレクトリクルーティングが効果的だ。LinkedIn、Indeed、Facebookなどのプラットフォームで、介護職や看護職の経験者に直接メッセージを送り、施設の魅力を伝える。
また、介護職員初任者研修や実務者研修の講師を務め、その場で施設のプレゼンを行うという方法も有効だ。研修受講者は介護業界への就職・転職を考えている人たちなので、ターゲットが明確になる。

さらに、地域のイベントや福祉関連のセミナーに積極的に参加し、施設の認知度を高めることも重要だ。「ハローワークでのミニしごと相談会へほぼ毎月参加」している施設もあるという。
ダイレクトリクルーティングで重要なのは、単に「人を募集している」というメッセージではなく、「あなたにぴったりの環境がある」という価値提案だ。応募者一人ひとりの経験やスキル、価値観に合わせたパーソナライズされたアプローチが効果的である。
ただし、このアプローチは手間と時間がかかるため、採用業務を専門に担当するスタッフを配置するか、外部の採用代行サービスを活用することも検討すべきだろう。
あなたは今日から何ができるだろうか?
例えば、LinkedIn上で「介護」「看護」などのキーワードで人材を検索し、丁寧なメッセージを送ってみてはどうだろう。「あなたのキャリアや経験に興味を持ちました」という一文から始まるパーソナライズされたメッセージは、大量送信の機械的なスカウトよりもはるかに効果的だ。
戦略4:採用プロセスの効率化と応募者体験の向上
応募から入職までのプロセスを見直し、効率化することも採用力向上の重要な要素だ。応募者が複数の施設に応募している場合、最初に内定を出した施設に決めてしまうことも少なくない。
まず、応募から面接までの時間を短縮することが重要だ。応募を受けたら24時間以内に連絡を取り、できるだけ早く面接日程を設定する。また、面接から内定までの期間も短くすることで、他施設に人材を取られるリスクを減らせる。
面接プロセスも標準化すると良い。秋田県の「株式会社横堀温泉紫雲閣」では、複数の事業所があり、求める人物像に違いもあることから、共通項目と事業所項目(自由)に分けた面談チェックシートを作成している。これにより、面接者の視点確認や面接基準の均等化が図れるようになった。
応募者体験を向上させる工夫も必要だ。例えば、面接当日に施設見学を組み込み、実際の職場環境や雰囲気を体感してもらうことで、入職後のミスマッチを防ぐことができる。

また、応募者とのコミュニケーションを丁寧に行うことも重要だ。面接後のフィードバックや、内定から入職までの間の定期的な連絡は、応募者の不安を取り除き、入職への期待を高める効果がある。
さらに、採用管理システム(ATS)の導入も検討すべきだ。秋田県の事例では、ATS「Talentclip」を導入したことで、送迎ドライバーの応募があり、採用に至ったという成功例もある。ATSを使えば、応募者情報の一元管理や、応募状況の可視化、自動メール送信などが可能になり、採用業務の効率化につながる。
あなたの施設では、応募から内定までどれくらいの期間がかかっているだろうか?
今すぐできることとして、応募者への返信時間を短縮する、面接日程の調整をスピーディーに行う、内定の意思決定プロセスを見直すなどが挙げられる。小さな改善の積み重ねが、採用成功率を大きく向上させる可能性がある。
戦略5:教育機関との戦略的パートナーシップ構築
新卒採用を成功させるためには、教育機関との強固な関係構築が不可欠だ。独立行政法人福祉医療機構の調査によると、特別養護老人ホームの新卒採用で最も効果があったのは「学校訪問(就職課等への働きかけ)」だった。
まず、地域の福祉系学校(大学、専門学校、高校)との関係構築から始めよう。就職課や福祉学科の教員と定期的にコミュニケーションを取り、施設の特徴や求める人材像を伝える。単なる求人票の提出ではなく、学校側と信頼関係を築くことが重要だ。
次に、インターンシップの受け入れも効果的だ。学生に実際の職場を体験してもらうことで、施設の魅力を直接伝えることができる。インターンシップを通じて学生と信頼関係を築き、卒業後の就職につなげるという流れだ。
また、学校の授業や就職セミナーへの講師派遣も有効な手段だ。現場の生の声を学生に届けることで、介護の仕事の魅力や施設の特徴を伝えることができる。
秋田県の採用力アップセミナーでは、「高校生の新卒、地元採用だけでは限界がある」という認識から、「来年度以降は県内外の専門、短大、大学も視野に採用活動を展開したい」という声が上がっている。採用ターゲットを広げることで、人材確保の可能性も広がるのだ。
教育機関との関係構築は一朝一夕にはいかない。地道な活動の積み重ねが必要だが、一度信頼関係ができれば、継続的な人材確保のパイプラインとなる。
今日からできることとしては、地域の福祉系学校のリストアップと、各学校の就職担当者への連絡から始めてみよう。「学生に介護の魅力を伝えたい」「現場見学の機会を提供したい」という姿勢で接すれば、学校側も前向きに検討してくれるはずだ。
戦略6:定着率向上のための職場環境・待遇改善
採用と同じくらい重要なのが、定着率の向上だ。せっかく採用しても、すぐに辞めてしまっては意味がない。
公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、介護職員が前職を辞めた理由として最も多かったのは「職場の人間関係に問題があったため」(34.3%)だった。特に看護職員では「職場の人間関係」が、施設系の介護職員では「収入が少なかったため」が他のサービス系と比べて多い傾向がある。
また、独立行政法人福祉医療機構の調査では、特養から退職した介護職員・看護職員ともに半数以上が勤続3年未満での退職、看護職員においては退職者の3人に2人が3年未満での退職という結果が出ている。
これらのデータから、定着率向上のためには、人間関係の改善と待遇面の向上が特に重要だということがわかる。
具体的な施策としては、まず職場のコミュニケーション改善が挙げられる。定期的な面談や意見交換の場を設け、スタッフの声に耳を傾ける。また、チームビルディング研修やレクリエーション活動を通じて、スタッフ同士の信頼関係を構築することも効果的だ。
待遇面では、給与体系の見直しや、キャリアパスの明確化が重要だ。「キャリアアップ体制の見直しを図り、離職防止の取組も実施していきたい」という声もある。将来の成長イメージが持てることで、スタッフのモチベーション維持につながる。
さらに、働きやすい環境づくりも欠かせない。「日勤で柔軟な勤務時間が選択できる正職員雇用の実施」「ICT化やロボット導入による業務負担軽減」など、働き方の多様化や業務効率化を進めることで、スタッフの負担を減らし、定着率を高めることができる。
あなたの施設では、スタッフの声をどれだけ聞いているだろうか?
今日からできることとして、匿名のアンケート調査を実施し、現場の声を集めてみてはどうだろう。「この施設で働き続けたいと思いますか?」「もし辞めるとしたら、その理由は何ですか?」といった質問から、改善すべきポイントが見えてくるはずだ。
戦略7:テクノロジーとデジタルツールの戦略的活用
採用活動においても、テクノロジーの活用は欠かせない。特に中小の介護施設では、限られた人員で採用活動を行う必要があるため、効率化は重要なテーマだ。
まず、採用管理システム(ATS)の導入を検討しよう。ATSを使えば、応募者情報の一元管理、選考プロセスの可視化、自動メール送信などが可能になり、採用業務の効率化につながる。秋田県の事例では、ATS「Talentclip」を導入したことで、応募者を獲得し、採用に成功している。
次に、SNSの活用も効果的だ。FacebookやInstagram、YouTubeなどを使って、施設の日常や働くスタッフの様子、イベントの模様などを発信することで、施設の魅力を伝えることができる。「施設の売り(施設情報・行事・職員情報など)を内部で検討し、SNSや動画や広報等で発信」している施設もある。
また、オンライン面接ツールの活用も検討すべきだ。特に遠方の応募者や、時間の制約がある応募者には、オンライン面接を選択肢として提供することで、応募のハードルを下げることができる。
さらに、採用マーケティングツールの活用も有効だ。求人広告の効果測定や、応募者の行動分析などができるツールを使えば、より効果的な採用戦略を立てることができる。
テクノロジー活用で重要なのは、ツールの導入自体が目的ではなく、採用プロセスの効率化や応募者体験の向上が目的であるということだ。自施設の課題や目標に合わせて、適切なツールを選択することが大切である。
今日からできることとして、まずは自施設のSNSアカウントを開設し、定期的に情報発信を始めてみよう。スタッフの日常や、利用者との心温まるエピソードなど、施設の魅力が伝わるコンテンツを発信することで、潜在的な応募者の関心を引くことができる。
戦略8:外国人材の戦略的活用と多様性の推進
人材不足が深刻化する中、外国人材の活用も重要な選択肢となっている。特に2025年は、訪問介護における特定技能外国人の受け入れが本格化する年でもある。
外国人材の採用では、まず受け入れ体制の整備が重要だ。「外国籍職員に対しての日本語研修、現地訪問による企業説明の実施」などの取り組みを行っている施設もある。言語や文化の違いをサポートする体制を整えることで、外国人材が働きやすい環境を作ることができる。
また、多様性を推進することも大切だ。年齢、性別、国籍などの違いを尊重し、それぞれの強みを活かせる職場づくりを目指そう。多様なバックグラウンドを持つスタッフが集まることで、新しい視点やアイデアが生まれ、サービスの質の向上にもつながる。
さらに、地域との連携も重要だ。「移住を視野に、田舎暮らしや町おこしをセットにしてアピール」している施設もある。特に地方の介護施設では、地域の魅力と合わせて発信することで、都市部からの移住者や外国人材を惹きつけることができる。
外国人材の採用では、専門的な知識や手続きが必要となるため、外部の専門機関や支援サービスの活用も検討すべきだろう。
今日からできることとして、まずは外国人材の受け入れに関する情報収集から始めてみよう。厚生労働省や外国人技能実習機構のウェブサイトには、外国人材の受け入れに関する情報が掲載されている。また、すでに外国人材を受け入れている施設の事例を研究することも有効だ。
戦略9:採用業務の専門化・外部リソースの活用
介護施設の本業は介護サービスの提供だ。採用活動に多くの時間とリソースを割くことは、本業に支障をきたす可能性がある。そこで、採用業務の専門化や外部リソースの活用を検討すべきだ。
まず、施設内に採用専門のチームや担当者を設置することが考えられる。「人事部の設置と法人のブランディングの実施」を行っている施設もある。採用のプロフェッショナルが戦略立案から実行までを一貫して担当することで、効率的かつ効果的な採用活動が可能になる。
しかし、中小規模の施設では、専門チームの設置が難しい場合も多い。そこで、外部の採用支援サービスの活用も選択肢となる。採用代行サービスや人材紹介会社との連携により、専門的なノウハウを活用した採用活動が可能になる。
例えば「かいごのおたすけ採用隊」のような中小介護事業者専門の採用課題解決サービスでは、月額10万円(税別・契約期間3ヶ月〜)で採用業務を完全代行し、初期費用無料、成果報酬無料、求人掲載費込みの明確な料金体系を提供している。
このようなサービスでは、戦略的求人設計、積極的スカウト活動、業界ネットワーク活用の3つのアプローチで採用課題を解決。中小事業者の特性と魅力を深く理解し、大手施設との差別化ポイントを明確にした採用戦略を策定している。
導入事例として、関東地方のデイサービスでは3ヶ月で5名採用、関西地方の特別養護老人ホームでは採用業務時間50%削減、九州地方のグループホームでは2ヶ月で2名採用の実績があるという。
採用業務の外部委託を検討する際は、単に「人を集める」だけでなく、自施設の特徴や魅力を理解し、長期的なパートナーシップを築ける業者を選ぶことが重要だ。
今日からできることとして、まずは自施設の採用業務の現状を分析してみよう。どれだけの時間とコストがかかっているか、どの程度の成果が出ているかを把握することで、改善点や外部委託の必要性が見えてくるはずだ。
まとめ:持続可能な採用戦略の構築に向けて
介護業界の人材不足は、今後さらに深刻化することが予想される。しかし、適切な戦略を立て、実行することで、採用力を飛躍的に高めることは可能だ。
本記事で紹介した9つの戦略をまとめると以下のようになる:
- 差別化された採用ブランディングの構築
- 求人情報の戦略的設計と多チャネル展開
- 積極的なスカウティングとダイレクトリクルーティング
- 採用プロセスの効率化と応募者体験の向上
- 教育機関との戦略的パートナーシップ構築
- 定着率向上のための職場環境・待遇改善
- テクノロジーとデジタルツールの戦略的活用
- 外国人材の戦略的活用と多様性の推進
- 採用業務の専門化・外部リソースの活用
これらの戦略は、単独で実施するよりも、複数を組み合わせて総合的に取り組むことで、より大きな効果を発揮する。また、自施設の状況や課題に合わせて、優先順位をつけて取り組むことも重要だ。
採用活動は一朝一夕に成果が出るものではない。継続的な取り組みと、PDCAサイクルによる改善が必要だ。定期的に採用活動の効果を測定し、改善点を見つけ、戦略を調整していくことが、持続可能な採用力の構築につながる。
最後に、採用と定着は表裏一体であることを忘れてはならない。「離職者が多い施設」=「定着しない、働きづらい施設」と見られてしまう可能性もある。「今いる職員が働きやすいと感じて辞めない施設」を作ることは、離職者を減らし、新規人材獲得コストを減らすだけでなく、「働きやすい環境を探している方への情報提供」にもなり、さらなる採用コストの減少にも繋がる。
介護施設の採用力向上は、単なる「人集め」ではなく、施設全体の魅力向上と一体的に取り組むべき課題なのだ。
あなたの施設でも、今日から実践できる戦略から始めてみてはいかがだろうか。小さな一歩が、大きな変化につながるはずだ。
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