
介護業界における採用の現状と課題
介護業界の採用市場は今、かつてないほどの厳しい状況に直面しています。厚生労働省のデータによれば、介護職の有効求人倍率は3.40倍と、全職種平均の1.33倍を大きく上回る「超」売り手市場となっています。
人材不足は日に日に深刻さを増し、2025年には55万人もの介護人材が不足すると予測されているのです。
特に中小介護事業者にとって、この採用難は経営を揺るがす重大な課題となっています。大手施設と比べて知名度や採用予算で劣る中小事業者は、応募者獲得に苦戦するケースが後を絶ちません。
介護施設が直面している採用課題には、主に以下のようなものがあります。
- 求人を出しても応募が集まらない
- 採用業務に時間を取られ本業に集中できない
- 人材紹介会社の高額な紹介料が経営を圧迫する
- 効果的な求人媒体の選定方法がわからない
- 面接調整や条件交渉などの事務作業が煩雑
- 中小事業者の魅力を効果的にアピールできない
これらの課題に対応するには、場当たり的な採用活動ではなく、戦略的かつ継続的な取り組みが必要です。そこで注目されているのが「採用専任担当者」の存在です。

今、介護業界では採用の成否が事業の継続性を左右するほど重要になっています。では、なぜ専任の採用担当者が必要なのでしょうか?次章では、その理由と重要性について掘り下げていきます。
採用専任担当者の重要性
採用専任担当者とは、文字通り採用業務に特化したスタッフのことです。一般的な介護施設では、施設長や管理者が他の業務と兼任で採用活動を行っているケースが多いのが現状です。
しかし、採用市場の厳しさが増す中、「採用」という専門分野に特化した担当者の存在が、採用成功率を大きく左右するようになってきました。その重要性は以下の点に表れています。
応募者とのスピーディな対応が可能に
採用成功の鍵を握るのは、実はレスポンスの速さです。かいごgardenのキャリア・コーディネーターたちが口を揃えて指摘するのが、「レスポンスが早い」施設ほど採用に成功しているという事実です。
具体的には、面接日の調整や採否結果の連絡が2〜3日以上かかると、せっかくの縁を逃してしまいます。
良い人材ほど複数の施設から声がかかっているものです。専任担当者がいれば、応募から面接、採用までのプロセスをスピーディに進められるため、優秀な人材を逃さずに済みます。

採用業務の専門性向上
採用活動は単なる事務作業ではなく、マーケティングやセールスの要素を含む専門的な業務です。効果的な求人原稿の作成、適切な媒体選定、面接技術、条件交渉など、専門知識やスキルが求められます。
専任担当者を置くことで、これらの専門性を高め、採用活動の質を向上させることができるのです。
埼玉県のある社会福祉法人では、ハローワークや地元の求人情報誌で募集をかけても応募が全く来ない状況でした。しかし、採用担当者が「ターゲットを絞る」という戦略で原稿を変更した結果、わずか数日で応募が獲得できるようになったのです。
現場スタッフの業務負担軽減
採用業務を現場スタッフが兼任すると、本来の介護業務に支障をきたす恐れがあります。特に中小介護施設では、人手不足の中で施設長や主任が採用活動も担当しているケースが多く見られます。
専任担当者を置くことで、現場スタッフは本来の業務に集中でき、サービスの質を維持・向上させることができます。
関西地方の特別養護老人ホームでは、採用業務の時間を50%削減できたという事例もあります。これは利用者へのケアの質向上にも直結する重要なポイントです。
一貫した採用ブランディングの構築
採用活動は単発の取り組みではなく、継続的な「採用ブランディング」が重要です。施設の魅力や価値観を一貫して発信し、求職者に選ばれる施設になるための取り組みが必要です。
専任担当者がいれば、長期的な視点で採用ブランディングを構築し、応募者の質と量を向上させることができます。
どうですか?採用専任担当者の重要性、理解していただけましたか?
次は、実際に採用専任担当者がどのような役割を担い、どのように採用成功率を高めているのかを見ていきましょう。
採用専任担当者の具体的な役割と業務
採用専任担当者は、単に求人広告を出して応募者と面接日程を調整するだけの存在ではありません。採用プロセス全体を戦略的に設計し、実行する重要な役割を担っています。
具体的にどのような業務を行うのか、詳しく見ていきましょう。
採用戦略の策定と実行
採用専任担当者の最も重要な役割は、施設の状況や目標に合わせた採用戦略を策定することです。
「どのような人材が必要か」「どこからどのように採用するか」「いつまでに何人採用するか」といった具体的な計画を立て、それを実行します。
都内のあるデイサービス企業では、若手人材の不足に悩んでいましたが、採用担当者が「年間で媒体に掲載し続ける」という施策を実施。時期に合わせて打ち出しを変更するなど工夫を行った結果、平均応募30件を実現しました。

求人媒体の選定と原稿作成
採用専任担当者は、ターゲットとなる人材層に最適な求人媒体を選定します。ハローワーク、求人サイト、SNS、紹介会社など、様々な採用チャネルの特性を理解し、効果的に活用します。
また、応募者の目を引き、施設の魅力を効果的に伝える求人原稿の作成も重要な業務です。単なる業務内容や条件の羅列ではなく、「なぜこの施設で働くべきか」という価値提案を含めた原稿作りが求められます。
社会福祉法人の事例では、「人間関係がいい」「職で優越がつかない」「家庭を持つ女性同士フォローし合える」といった働く女性のメリットを打ち出した結果、応募獲得につながりました。
応募者対応とコミュニケーション
応募者からの問い合わせ対応、書類選考、面接日程の調整など、応募者とのコミュニケーションを一元管理します。
特に重要なのは、応募者に対する迅速かつ丁寧な対応です。レスポンスの速さは採用成功率に直結します。面接日の調整は1〜2日以内、採否結果は面接時にその場で即決するなど、スピード感のある対応が求められます。
「一方的な質問形式ではなく対話形式の面接」「リスペクトが感じられるような問いかけの姿勢」といった点も、採用成功率を高める重要なポイントです。
面接の設計と実施
面接は単なる質疑応答ではなく、応募者と施設の相互理解を深める重要な機会です。採用専任担当者は、効果的な面接の設計と実施を担当します。
面接では「当施設に入社してくれたら、こんなふうに成長できます」という具体像や、「利用者様に対して持っている想い」「ケアに対する考え方」をしっかり語ることが大切です。そして相手にも「どう成長したいですか」「どんなケアがしたいですか」と問いかけ、耳を傾けます。
面接の際には、「丁寧な言葉遣いで話し、大切なお客様のように接する」「資料やパンフレットなどを準備して、歓迎する雰囲気を出す」「現場をよく知るスタッフが現場を案内する」といった工夫も効果的です。

採用データの分析と改善
採用活動の効果を高めるには、データに基づいた継続的な改善が欠かせません。採用専任担当者は、応募数、面接率、採用率、採用コストなどの指標を分析し、採用プロセスの改善点を見つけ出します。
「どの媒体からの応募が多いのか」「どの段階で辞退者が出ているのか」「採用された人材の共通点は何か」といった分析を通じて、より効果的な採用活動を実現します。
採用は一度きりの取り組みではなく、継続的な改善が必要なプロセスなのです。
採用専任担当者がいない場合の代替策
専任の採用担当者を置くことが理想ですが、人員や予算の制約から難しい場合もあるでしょう。そんな場合の代替策をいくつか紹介します。
若手職員の採用活動への参画
社会福祉法人すこやか福祉会では、若手職員ならではのアイデアを採用活動に活かす「ケアワーカー魅力発信委員会」を発足させました。特にYouTubeを活用した情報発信に力を入れ、実際の介護現場での取り組み事例紹介や各施設の紹介ムービーなどを公開しています。
この取り組みにより、面接に来た学生や求職者から「YouTubeを見ました」との声が多く挙がるようになり、採用活動にプラスの効果をもたらしました。
若手職員の参画は、新鮮なアイデアの創出だけでなく、職員自身の成長にもつながる一石二鳥の取り組みです。
採用チームの結成
南山城学園では、若手職員の育成を目的として、新卒採用に携わる「魅力発信チーム」を結成しました。メンバーは就職説明会や座談会への参加、大学の講義でのゲストスピーカーとしての講演、映像制作、内定者フォローなど幅広い業務に携わっています。
特に就職説明会や内定者フォローでは、学生と属性の近い職員を引き合わせることで、一人ひとりの学生により合ったサポートを実現しています。
この活動により、法人の方向性に共感した学生が応募してくるようになり、応募者の質が向上。ミスマッチが少なくなり、入職後の定着率も上がったそうです。

採用代行サービスの活用
人材や時間の制約が厳しい場合は、採用業務を外部に委託する選択肢もあります。「かいごのおたすけ採用隊」のような中小介護事業者専門の採用代行サービスを活用することで、専門性の高い採用活動を実現できます。
このようなサービスでは、月額定額制で採用業務を完全代行し、求人戦略の策定・実行、求人媒体への掲載代行、積極的スカウト活動、応募者対応・管理、面接日程調整代行、給与・条件交渉サポートなど、採用プロセス全体をカバーしています。
関東地方のデイサービスでは3ヶ月で5名の採用に成功、関西地方の特別養護老人ホームでは採用業務時間を50%削減、九州地方のグループホームでは2ヶ月で2名の採用に成功するなど、具体的な成果も出ています。
採用専任担当者に求められるスキルと資質
採用専任担当者として成功するためには、特定のスキルと資質が求められます。どのような人材が採用担当者に向いているのでしょうか。
コミュニケーション能力
採用活動の本質は「人と人とのコミュニケーション」です。応募者との対話を通じて相互理解を深め、施設と応募者の良いマッチングを実現する能力が求められます。
特に重要なのは「聴く力」です。応募者の言葉の背景にある想いや価値観を理解し、適切な情報提供や提案ができる人材が理想的です。
また、施設の魅力や価値観を分かりやすく伝える「伝える力」も欠かせません。
マーケティング思考
採用活動は「人材市場における自施設のマーケティング」と捉えることができます。ターゲット設定、価値提案、チャネル選定など、マーケティングの考え方を採用活動に応用できる思考が重要です。
特に中小介護施設では、大手との差別化ポイントを明確にし、ターゲットを絞った採用戦略が効果的です。「アットホームな職場環境」「個人の成長機会」「地域密着型サービスの価値」など、中小ならではの魅力を効果的に訴求できる視点が求められます。

データ分析力
効果的な採用活動を実現するには、データに基づいた意思決定が欠かせません。応募数、面接率、採用率などの指標を分析し、改善点を見出す能力が重要です。
「どの媒体からの応募が多いのか」「どのような原稿が反応を得ているのか」「採用コストはどれくらいか」といった分析を通じて、より効率的・効果的な採用活動を実現します。
ただし、数字だけに囚われず、「人」を見る視点とのバランスも大切です。
共感力と介護への理解
介護業界の採用担当者には、介護の仕事や介護職の価値観への深い理解と共感が求められます。
「なぜ介護の仕事を選ぶのか」「介護職にとって何が大切か」といった点を理解し、応募者の想いに共感できる人材が理想的です。
介護の経験がなくても、介護の価値や意義を理解し、尊重する姿勢があれば、応募者との信頼関係を築くことができます。
成功事例から学ぶ採用戦略のポイント
最後に、実際に採用に成功している介護施設の事例から、採用戦略のポイントを学んでみましょう。
他社との差別化を図る
採用市場で競争力を高めるには、他施設との差別化が不可欠です。特に中小介護施設は、大手にはない魅力をアピールすることが重要です。
埼玉県の社会福祉法人では、「人間関係がいい」「職で優越がつかない」「家庭を持つ女性同士フォローし合える」といった、働く女性のメリットを打ち出した結果、応募獲得につながりました。
差別化のポイントは「規模の大きさ」や「給与の高さ」だけではありません。「アットホームな雰囲気」「成長機会の豊富さ」「地域との密接な関係」など、中小ならではの魅力を見つけ、伝えることが大切です。
採用条件の柔軟化
人材確保に成功している事業所では、採用条件を柔軟に設定する傾向があります。年齢、雇用形態、時間帯、曜日、夜勤のみ、日勤のみ、ブランク、無資格、未経験、転職歴などで設けていた制限を緩和し、より幅広い人材にアプローチしています。
特に良い人材に関しては、日勤のみ、日祝休みでの正社員雇用を行うなど、柔軟な対応が採用成功につながっています。
「こんな条件では人が集まらない」と決めつけず、応募者のニーズに合わせた柔軟な条件設定を検討してみましょう。

採用プロセスの迅速化
採用に成功している施設に共通するのは、採用プロセスの迅速さです。面接日の調整は1〜2日以内、採否結果は面接時にその場で即決するなど、スピード感のある対応が採用成功率を高めています。
良い人材ほど複数の施設から声がかかっているため、レスポンスの遅さが採用機会の損失につながります。
採用プロセスの各段階で無駄な待ち時間がないか見直し、可能な限り迅速な対応を心がけましょう。
職場の雰囲気づくり
求職者は面接時に「この職場で働きたいか」を判断する際、現場の雰囲気を重視します。清潔感のある施設、笑顔で挨拶してくれるスタッフ、歓迎する雰囲気など、第一印象が採用成功に大きく影響します。
面接のある日は朝礼でスタッフに伝え、「これから一緒に働いてほしい方なので、見かけたらぜひ笑顔で挨拶お願いします」と伝えておくなどの工夫が効果的です。
採用活動は「施設全体で取り組む活動」という意識を持ち、全スタッフを巻き込んだ雰囲気づくりを心がけましょう。
まとめ:採用専任担当者が介護施設の未来を拓く
介護業界の人材不足が深刻化する中、採用活動の質が施設の存続と発展を左右する時代になっています。本記事では、介護施設における採用専任担当者の重要性と役割について解説してきました。
採用専任担当者の存在は、応募者とのスピーディな対応、採用業務の専門性向上、現場スタッフの業務負担軽減、一貫した採用ブランディングの構築など、多くのメリットをもたらします。
専任担当者の具体的な役割としては、採用戦略の策定と実行、求人媒体の選定と原稿作成、応募者対応とコミュニケーション、面接の設計と実施、採用データの分析と改善などが挙げられます。
専任担当者を置くことが難しい場合は、若手職員の採用活動への参画、採用チームの結成、採用代行サービスの活用などの代替策も検討できます。
採用に成功している施設の事例からは、他社との差別化、採用条件の柔軟化、採用プロセスの迅速化、職場の雰囲気づくりなどが重要なポイントとして浮かび上がってきました。
2025年に向けて介護人材の不足がさらに深刻化する中、戦略的な採用活動の重要性は一層高まっています。採用専任担当者の設置や採用プロセスの見直しを通じて、人材確保の課題に積極的に取り組んでいきましょう。
介護施設の未来は、人材の確保と定着にかかっています。採用専任担当者の存在が、その未来を切り拓く鍵となるのです。
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