
歯科衛生士の定着率の現状と課題
歯科医院を経営している先生なら、痛いほどわかるはずだ。歯科衛生士の採用と定着がいかに難しいかを。
厚生労働省による職業情報提供サイトによると、2022年度における歯科衛生士の求人倍率は3.39倍。つまり1人の歯科衛生士に対して3件以上の求人が存在する状況だ。さらに一般社団法人全国歯科衛生士教育協議会の調査では、2022年度の求人倍率は驚異の22.6倍という数値も報告されている。
歯科衛生士にとって転職市場は常に売り手市場。より良い条件を求めて転職するハードルが極めて低いのが現実なのだ。
日本歯科衛生士会が2020年に発表した「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によると、現在の職場での勤務年数が5年未満の歯科衛生士は38.7%にも上る。つまり、約4割が5年以内に離職している計算だ。
さらに衝撃的なのは、歯科衛生士の76.4%が1回以上の転職を経験しているという事実。そのうち50%以上は複数回の転職をしているのだ。
なぜこれほどまでに歯科衛生士の定着率は低いのだろうか?
歯科衛生士が退職する主な理由とは?
歯科衛生士の離職理由を知ることは、定着率向上の第一歩だ。
日本歯科衛生士会の調査によると、歯科衛生士の主な転職理由として最も多いのが「出産・育児(11.7%)」と「結婚(9.9%)」。つまり、ライフステージの変化が大きな転機となっている。これは女性が99%を占める職業ならではの特徴と言えるだろう。結婚や出産を機に働き方を見直す歯科衛生士が多いのは自然なことだ。
しかし、ライフイベントだけが理由ではない。「経営者との人間関係(9.1%)」も上位に入っている点に注目すべきだ。特に常勤の歯科衛生士が退職を決断するケースでは、経営者との人間関係が最も多い理由となっている。
あなたの医院でも、こんな場面を目にしたことはないだろうか?
「先生、実は来月いっぱいで…」と切り出された退職の相談。理由を尋ねても「家庭の事情で」と濁された答え。本当の理由は言えないまま、また一人優秀な歯科衛生士が去っていく。
表面上は「家庭の事情」と言われても、実際には職場環境や人間関係に不満を抱えていたケースは少なくない。
その他にも「給与・待遇への不満」「仕事内容のレベルアップのため」「労働環境の問題」など、様々な理由が離職につながっている。
特に若い歯科衛生士ほど転職を考える傾向が強く、20代後半では「転職を考えたことがない」と答えた割合がわずか22.2%しかないというデータもある。
これらの現状を踏まえて、歯科衛生士の定着率を高めるための具体的な対策を見ていこう。
定着率向上策①:柔軟な働き方を支援する
歯科衛生士の主な退職理由が「出産・育児」「結婚」というライフイベントであることを考えると、最も効果的な定着策は柔軟な働き方の支援だ。
具体的には、産休・育休制度の充実はもちろん、時短勤務や選択的な勤務時間制度の導入が効果的。子育て中の歯科衛生士が働きやすい環境を整えることで、貴重な人材の流出を防ぐことができる。
ある東京都内の歯科医院では、子育て中の歯科衛生士向けに「スクールタイム勤務」という制度を導入した。午前9時から午後3時までの勤務で、子どもの学校や保育園の時間に合わせた働き方を可能にしたのだ。
「以前は育児との両立が難しく退職を考えていましたが、この制度のおかげで続けられています。子どもの行事にも参加できるし、急な発熱でも対応できる。本当に助かっています」
このように柔軟な勤務体系を導入した結果、過去3年間で育児を理由に退職した歯科衛生士はゼロになったという。
また、急な欠勤や早退が必要になった場合に、スタッフ全員でサポートできる体制づくりも重要だ。「お互い様」の精神で助け合える職場文化を醸成することで、ライフステージが変わっても安心して働き続けられる環境が整う。

さらに、ブランクがあっても復職しやすい環境を整えることも大切だ。「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によると、歯科衛生士の名簿登録者数は約30万人なのに対し、実際の就業者数は約14万人。つまり、約16万人もの「潜在歯科衛生士」が存在している。
彼女たちが安心して職場復帰できるよう、復職支援プログラムやリフレッシュ研修を用意することで、貴重な人材を医院に迎え入れることができるだろう。
定着率向上策②:キャリア開発を支援する
歯科衛生士の転職理由として「仕事内容のレベルアップのため」が上位に入っていることから、スキルアップやキャリア開発の支援も重要な定着策となる。
歯科衛生士は高い専門性を持つ職業だ。基本的に仕事へのモチベーションも高く、患者の健康を守ることにやりがいを感じている。このやる気を支援し、さらなる成長を促すことが、長期的な定着につながる。
具体的な施策としては、セミナーや学会への参加支援、認定資格取得のバックアップなどが効果的だ。

例えば、日本歯周病学会認定歯科衛生士や日本臨床歯周病学会認定歯科衛生士などの専門資格の取得を奨励し、取得費用を医院が負担する制度を設けることで、歯科衛生士のモチベーション向上と専門性の強化が同時に実現できる。
ある関西の歯科医院では、歯科衛生士のキャリアパスを明確に設定し、段階的なスキルアップを支援する仕組みを導入した。その結果、過去5年間の歯科衛生士の定着率が95%を超えるという驚異的な成果を上げている。
この医院の院長はこう語る。
「歯科衛生士一人ひとりの成長が医院全体の成長につながります。彼女たちが自分の将来を描けるよう、キャリアパスを明確にし、必要な研修や資格取得を全面的にサポートしています。その結果、モチベーションが高まり、患者さんへのケアの質も向上しました」
また、院内での勉強会や症例検討会を定期的に開催することも効果的だ。歯科医師からの専門的な知識の共有だけでなく、歯科衛生士同士が互いの技術や知識を高め合う場を設けることで、チーム全体のレベルアップにつながる。
さらに、新しい技術や機器の導入時には、歯科衛生士にもその使用方法や理論を学ぶ機会を提供することで、常に最先端の歯科医療に触れられる環境を整えることができる。
定着率向上策③:適切な評価と報酬制度を構築する
歯科衛生士の平均年収は約370万円と言われている。一般的な女性の平均年収(約350万円)と比較するとわずかに高いものの、責任の重さや専門性を考えると十分とは言えない状況だ。
給与面での不満は離職の大きな要因となる。特に経験を積んだベテラン歯科衛生士ほど、スキルに見合った報酬を求める傾向が強い。
適切な評価と報酬制度を構築するためには、まず明確な評価基準を設けることが重要だ。スキルレベル、担当患者数、自費診療の提案実績など、具体的な指標に基づいて評価し、それを給与やボーナスに反映させる仕組みを作ろう。

ある東京都内の歯科医院では、歯科衛生士の貢献度を可視化するシステムを導入した。担当患者のリコール率、予防処置の実施数、患者満足度調査の結果などを総合的に評価し、四半期ごとにボーナスとして還元している。
この医院の歯科衛生士はこう語る。
「自分の頑張りが数字として見えるので、モチベーションが上がります。特に患者さんからの評価が給与に反映されるのは嬉しいですね。より丁寧なケアを心がけるようになりました」
また、基本給だけでなく、スキルや資格に応じた手当の導入も効果的だ。例えば、認定歯科衛生士資格保持者には資格手当を支給する、自費診療の提案・実施に対してインセンティブを設けるなど、頑張りが直接報酬に結びつく仕組みを整えよう。
さらに、定期的な昇給の機会を設けることも重要だ。経験年数や能力に応じた給与テーブルを作成し、歯科衛生士が長く働くほど待遇が向上する仕組みを作ることで、長期的な定着を促すことができる。
給与以外の福利厚生も見直してみよう。有給休暇の取得促進、社会保険の完備、退職金制度の導入など、長期的な安心感を提供することも定着率向上には効果的だ。
定着率向上策④:職場環境と人間関係の改善
経営者との人間関係が離職理由の上位に入っていることからもわかるように、職場の人間関係は定着率に大きく影響する。
特に歯科医院は少人数で運営されることが多く、人間関係の問題が発生すると逃げ場がなく、ストレスが蓄積しやすい環境だ。
まずは院長自身のコミュニケーションスタイルを見直してみよう。ワンマン経営や過度に厳しい指導は、歯科衛生士の心理的安全性を脅かし、離職につながりやすい。
定期的なミーティングの開催も効果的だ。業務上の問題点や改善策を話し合う場を設けることで、歯科衛生士の声を経営に反映させることができる。
北海道のある歯科医院では、毎週月曜日の朝に30分間の「ハッピーミーティング」を実施している。業務連絡だけでなく、先週の良かった出来事や感謝したいことを全員で共有するのだ。
この医院の院長はこう語る。
「ミーティングを始めてから、スタッフ間のコミュニケーションが活発になりました。お互いを認め合う文化が生まれ、チームワークが格段に向上しています。離職率も大幅に下がりましたね」
また、院長と歯科衛生士の1on1ミーティングも定期的に行うと良いだろう。キャリアの悩みや将来の希望、職場環境の改善点などを率直に話せる場を設けることで、問題が大きくなる前に解決できる。
さらに、チームビルディングのためのイベントや研修も効果的だ。食事会や旅行などのカジュアルな場での交流は、普段の業務では見えない一面を知るきっかけとなり、相互理解を深めることができる。
職場の物理的環境も見直してみよう。休憩室の整備、エアコンの適切な管理、人間工学に基づいた診療台や椅子の導入など、働きやすい環境づくりも定着率向上には欠かせない。
定着率向上策⑤:業務負担の適正化と効率化
歯科衛生士の離職理由の一つに「労働環境への不満」がある。特に人手不足の歯科医院では、本来の業務に加えて受付や雑務までこなさなければならないケースも少なくない。
過度な業務負担は燃え尽き症候群(バーンアウト)を引き起こし、離職につながる大きな要因となる。
まずは業務内容の棚卸しを行い、歯科衛生士が本来担うべき業務と、他のスタッフに振り分けられる業務を明確に区分けしよう。
例えば、受付業務や会計処理、物品管理などは歯科助手や受付スタッフに任せ、歯科衛生士には口腔ケアや予防処置など、専門性を活かせる業務に集中してもらうことが理想的だ。
業務効率化のためのシステム導入も検討しよう。電子カルテやオンライン予約システム、自動リコールシステムなどのIT化により、業務の効率化と負担軽減が実現できる。
福岡県のある歯科医院では、業務効率化のためにタスク管理システムを導入した。各スタッフの業務を可視化し、負担が特定のスタッフに集中しないよう調整している。
この医院の歯科衛生士はこう語る。
「以前は雑務に追われて本来の仕事に集中できませんでしたが、今は役割分担が明確になり、専門的なケアに時間を使えるようになりました。患者さんとじっくり向き合えるので、やりがいも増しています」
また、腰痛などの身体的負担を軽減するための工夫も重要だ。適切な診療姿勢の指導、人間工学に基づいた器具の導入、定期的なストレッチの推奨など、長く健康に働けるための配慮が必要だ。
さらに、適切な休憩時間の確保も見逃せない。診療の合間に十分な休憩を取れる環境を整えることで、疲労の蓄積を防ぎ、長期的な健康維持につながる。
定着率向上策⑥:新人教育とメンタリングの充実
歯科衛生士の離職は、特に就職後1〜3年の若手に多い傾向がある。新卒の歯科衛生士が不安に感じるのは、主にスキル・知識不足と人間関係だ。
この時期をいかにサポートするかが、長期的な定着につながる鍵となる。
まずは体系的な新人研修プログラムを整備しよう。学校で学んだ知識と実際の臨床現場のギャップを埋めるための実践的な研修が効果的だ。
具体的には、基本的な診療補助から始め、徐々に予防処置やカウンセリングなど、より高度な業務へとステップアップできるカリキュラムを組むと良い。

大阪のある歯科医院では、新人歯科衛生士に対して「バディシステム」を導入している。入職後の1年間は、経験豊富な先輩歯科衛生士がマンツーマンでサポートする仕組みだ。
この医院の教育担当者はこう語る。
「新人の頃は些細なことでも不安になるもの。いつでも質問できる先輩がいることで、安心して成長できる環境を作っています。バディシステム導入後は、新人の離職率がゼロになりました」
また、定期的なフィードバックの機会を設けることも重要だ。成長を実感できないと、モチベーションが低下してしまう。小さな成功体験を積み重ね、自信をつけさせることが定着につながる。
さらに、メンタルヘルスケアも忘れてはならない。新しい環境への適応は精神的なストレスも大きい。定期的な面談や相談窓口の設置など、心のケアも含めたサポート体制を整えよう。
教育マニュアルの整備も効果的だ。基本的な業務手順や院内ルールをマニュアル化することで、新人でも安心して業務に取り組める環境を作ることができる。
定着率向上策⑦:専門的な採用代行サービスの活用
歯科衛生士の定着率を高めるためには、採用段階からのマッチングが極めて重要だ。いくら職場環境を整えても、医院の理念や方針に合わない人材を採用してしまうと、早期離職のリスクが高まる。
近年注目されているのが、歯科医院特化型の採用代行サービス(RPO:Recruitment Process Outsourcing)の活用だ。これらのサービスは、単なる人材紹介にとどまらず、医院の特性や求める人材像を深く理解した上で、最適なマッチングを実現する。
例えば「歯科医院おたすけ採用隊」のようなサービスでは、AIによる高精度マッチングと歯科業界に精通した専門コンサルタントの知見を組み合わせ、医院の診療方針や職場環境にマッチする歯科衛生士を見つけ出す。

従来の採用方法と比較すると、マッチング精度、採用スピード、コスト効率、透明性、定着率など、あらゆる面で優位性がある。特に定着率においては、適切なマッチングにより95%以上という高い数字を実現しているケースもある。
ある一般歯科医院では、2週間という短期間で理想的な歯科衛生士を採用し、定着率100%を達成。また別の矯正歯科では、矯正経験豊富な歯科助手2名を1ヶ月で採用し、患者満足度の向上につながったという実績もある。
このようなサービスの特徴は、採用活動の完全代行だけでなく、入社後のオンボーディングや定着支援プログラムまで提供している点だ。歯科医院全体のチームパフォーマンス向上に貢献する総合的なサポートが受けられる。
「採用のプロに任せることで、院長である私は診療に集中できるようになりました。何より、医院の雰囲気に合った人材を見つけてもらえるので、チーム全体の一体感が高まっています」
料金プランも柔軟で、月額5万円〜20万円程度から選択可能。初期費用は0円で、成果が出なければ全額返金保証がついているサービスもあり、リスクを最小限に抑えながら質の高い採用活動が実現できる。
まとめ:歯科衛生士の定着率向上は医院経営の要
歯科衛生士の定着率向上は、単なる人材確保の問題ではなく、医院経営の根幹に関わる重要課題だ。
歯科衛生士が長く働き続けることで、患者との信頼関係が深まり、治療の質も向上する。それは患者満足度の向上、リコール率の改善、そして医院の安定経営につながっていく。
本記事で紹介した7つの定着率向上策をまとめると:
- 柔軟な働き方の支援:ライフステージの変化に対応できる勤務体系の整備
- キャリア開発の支援:セミナーや資格取得のバックアップ
- 適切な評価と報酬制度:頑張りが報われる明確な評価基準の構築
- 職場環境と人間関係の改善:心理的安全性の高いチーム作り
- 業務負担の適正化と効率化:本来の専門業務に集中できる環境整備
- 新人教育とメンタリングの充実:初期段階からの手厚いサポート
- 専門的な採用代行サービスの活用:最適なマッチングによる採用の質向上
これらの施策は、一朝一夕に成果が出るものではない。しかし、院長自身が本気で取り組み、継続的に改善を重ねることで、必ず歯科衛生士の定着率は向上する。
最後に、歯科衛生士の定着率向上に悩む院長先生へ。
あなたの医院の歯科衛生士は、単なる従業員ではなく、共に医院を成長させるパートナーです。彼女たちの声に耳を傾け、成長を支援し、働きがいのある環境を整えることが、結果的に医院の発展につながるのです。
歯科衛生士の採用と定着にお悩みの方は、専門的なサポートを受けることも検討してみてはいかがでしょうか。歯科医院おたすけ採用隊では、AIと専門コンサルタントの知見を活かした採用支援から定着率向上までをワンストップでサポートしています。まずは無料相談から始めてみませんか?