
介護施設の人材不足が深刻化している現状
介護業界の人材不足は、年々深刻さを増しています。2025年には介護人材の需要見込み253万人に対して、供給見込みは215.2万人と約40万人もの差が生じると予測されています。
この状況は、介護サービスの質の低下や施設運営の継続性に大きな影響を与えかねない深刻な問題です。特に中小規模の介護施設では、大手に比べて採用予算や知名度で劣るため、さらに厳しい状況に置かれています。

介護分野の求人有効倍率は2022年1月時点で3.68倍と最高水準を記録。これは他の職種と比べても2倍以上の開きがあり、人材獲得競争が激化していることを示しています。
「毎日求人サイトをチェックしているのに、応募がほとんど来ない…」
これは多くの介護施設の採用担当者が抱える悩みではないでしょうか。従来の「求人広告を出して応募を待つ」という受け身の採用手法だけでは、もはや必要な人材を確保することが難しくなっているのです。
スカウト型採用とは?攻めの採用戦略の基本
スカウト型採用とは、企業側から候補者へ直接アプローチをする採用手法です。「ダイレクトリクルーティング」とも呼ばれるこの方法は、待ちの姿勢から攻めの採用へと転換する画期的な手法といえます。
従来の求人広告では、応募がない限りやりとりができませんでした。しかしスカウト型採用では、企業側から積極的にアプローチすることで、潜在的な転職希望者との接点を作り出せるのです。

特に介護業界では、次のような人材にアプローチできる点が大きなメリットです。
- 転職サイトに登録はしているが、自ら積極的に応募していない潜在層
- 現職に不満はあるものの、転職活動を本格的に始めていない層
- 特定のスキルや経験を持つ、ピンポイントで欲しい人材
ある地方の中規模介護施設では、スカウト型採用を導入したことで、「現場の声」を直接伝えられるようになりました。施設長やユニットリーダーも採用活動に関わり、「この経歴ならうちで活かせる」と現場目線の判断を加えることで、ミスマッチの少ない採用に成功したのです。
あなたの施設でも、このような攻めの採用戦略を取り入れてみませんか?
介護施設におけるスカウト採用の5つの効果的手法
1. 求人サイトのスカウト機能を活用する
多くの求人サイトには、登録者にスカウトメールを送れる機能が備わっています。「ウェルミージョブ」などの介護専門求人サイトでは、資格や経験、希望条件などで候補者を絞り込み、直接メッセージを送ることが可能です。
効果的なスカウトメールを送るポイントは、件名で興味を引き、冒頭でスカウトした理由を明確に伝えることです。「○○の資格をお持ちの方に、ぜひ私たちの施設で活躍していただきたい」といった特別感を演出しましょう。
メール本文では、施設の特徴や業務内容を簡潔にまとめ、具体的な魅力(給与・休暇・職場環境など)を明示することが重要です。
2. SNSを活用した能動的アプローチ
LinkedInやFacebookなどのSNSは、潜在的な候補者を見つけ出す宝庫です。介護関連のグループやコミュニティに参加し、業界内のネットワークを広げましょう。

SNSでのアプローチは、いきなり採用の話をするのではなく、まずは業界の話題や情報共有から始めるのがコツです。信頼関係を構築した上で、自施設の魅力や求人について伝えると効果的です。
「最初は業界の情報交換から始めて、3ヶ月かけて信頼関係を築いた結果、夜勤対応可能な介護福祉士を採用できました」
これは九州地方のグループホームの管理者の声です。地道な関係構築が実を結んだ好例といえるでしょう。
3. 従業員リファラル(社員紹介)制度の構築
自社の従業員からの紹介は、採用におけるゴールドスタンダードとも言われています。紹介者は職場環境を理解しているため、ミスマッチが少なく、定着率も高い傾向があります。
効果的なリファラル制度を構築するには、適切なインセンティブ設計が重要です。入社後3ヶ月経過時と6ヶ月経過時の2段階で報奨金を支給するなど、定着を促す仕組みを取り入れましょう。
また、単に「知り合いを紹介して」と伝えるだけでなく、「どんな人材が必要か」を具体的に伝えることで、質の高い紹介につながります。
4. 業界イベント・セミナーでの人材発掘
介護関連の展示会、セミナー、勉強会は、意欲的な人材と出会える絶好の機会です。単に参加するだけでなく、可能であれば登壇者やパネリストとして参加することで、自施設の知名度と信頼性を高められます。
イベント後の交流会では、興味を持った参加者と自然な形で会話を始め、連絡先を交換するところから関係構築を始めましょう。その際、名刺交換だけで終わらせず、「今度施設見学に来ませんか?」など次のステップを提案することが重要です。

5. 専門スカウトサービスの活用
自社での採用活動に限界を感じる場合は、介護人材に特化したスカウトサービスの活用も効果的です。「かいごのおたすけ採用隊」のような中小介護事業者専門の採用支援サービスでは、以下のようなサポートを受けられます。
- 戦略的求人設計:大手施設との差別化を図る独自の求人戦略策定
- 積極的スカウト活動:専門スタッフによる個別カスタマイズしたスカウト
- 業界ネットワーク活用:優良人材紹介会社との連携による人材紹介
関東地方のあるデイサービス(従業員15名)では、このようなサービスを活用して3ヶ月で5名の採用に成功した実績があります。中小規模だからこそ、専門家のサポートを受けることで採用の質と効率を高められるのです。
効果的なスカウトメールの書き方と実例
スカウトメールは、候補者の心を動かす重要なファーストコンタクトです。どんなに優れた施設でも、最初のメッセージが魅力的でなければ、返信してもらえる可能性は低くなります。
効果的なスカウトメールを書くためのポイントを見ていきましょう。
件名で興味を引く
多くのスカウトメールが届く中で開封してもらうには、魅力的な件名が不可欠です。候補者の名前を入れたり、具体的な数字や特徴を盛り込んだりすることで開封率が高まります。
- 「【未経験OK・月給28万円~】○○さまの介護スキルを活かせる職場です」
- 「【年間休日120日】○○さま、アットホームな介護施設で働きませんか」
- 「介護福祉士の○○さまへ。キャリアアップできる環境をご用意しています」
冒頭でスカウト理由を明確に
メール本文の冒頭では、なぜその人にスカウトしたのかを具体的に伝えましょう。「○○の経験をお持ちの方」「○○の資格をお持ちの方」など、相手の強みや特徴に言及することで、「自分だけに送られたメッセージ」という特別感を演出できます。

施設の魅力を具体的に伝える
「アットホームな職場です」「働きやすい環境です」といった抽象的な表現ではなく、具体的な特徴や数字を盛り込みましょう。
- 「月給28万円~、賞与年2回(計3.5ヶ月分)、年間休日120日」
- 「入職後3年間で介護福祉士の資格取得を全面サポート(受験料全額補助)」
- 「残業月平均5時間以下、有給消化率85%以上を実現」
これらの具体的な情報は、候補者が自分のキャリアや生活をイメージする上で非常に重要です。
スカウトメールの良い例
以下は、介護施設からのスカウトメールの良い例です。
件名:【年間休日120日】○○様、キャリアアップできる介護環境です
○○様 初めまして。デイサービス「○○」の採用担当の△△と申します。 ○○様の介護福祉士としてのご経験とデイサービスでの勤務経験に大変興味を持ち、ご連絡させていただきました。 当施設は「利用者様の笑顔を第一に」という理念のもと、少人数制のきめ細かいケアを提供しています。現在、チームリーダーとして活躍いただける方を探しており、○○様のスキルと経験が非常に活かせる環境だと考えております。 【当施設の特徴】
・月給28万円~、賞与年2回(計3.5ヶ月分)
・年間休日120日、有給消化率85%以上
・残業月平均5時間以下
・資格取得支援制度あり(費用全額補助)
・キャリアパス制度あり(リーダー→主任→管理者) ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひ一度お話をさせていただければ幸いです。施設見学も随時受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。 ○○様からのご連絡を心よりお待ちしております。
このメールの特徴は、冒頭で相手の経験に言及し、なぜスカウトしたのかを明確にしている点です。また、施設の特徴や待遇を具体的な数字で示し、次のステップ(面談や施設見学)を明確に提案しています。
スカウト採用を成功させるための実践ポイント
スカウト採用を導入しても、やみくもに多くの候補者にアプローチするだけでは効果は限定的です。成功に導くための実践ポイントを見ていきましょう。
1. 理想の人材像を明確にする
「介護経験者」というだけでなく、「どんな価値観の人と働きたいか」「将来どう活躍してほしいか」まで具体的に描くことで、スカウト対象の精度が格段に上がります。
例えば「利用者様との丁寧なコミュニケーションを大切にし、チームワークを重視できる方」「将来的には新人教育も担える人材」など、具体的なイメージを持ちましょう。
2. 現場の声を取り入れた魅力発信
スカウトメールや面談では、現場スタッフのリアルな声を取り入れることが効果的です。「この仕事に詳しいからこそわかる魅力」で心を動かせるかが勝負です。
「うちの施設では、利用者様の小さな変化に気づいた時の喜びを共有できる仲間がいます」「困った時にすぐに助け合える関係性が自慢です」など、現場ならではの具体的なエピソードが響きます。
3. 返信後の素早いフォローアップ
スカウトメールへの返信があった場合は、できるだけ早く(理想は24時間以内)に返信することが重要です。興味を持ってくれた貴重な機会を逃さないよう、迅速な対応を心がけましょう。
また、面談の日程調整では、候補者の都合を最大限尊重する姿勢を示すことで、「この施設は従業員を大切にしてくれる」という印象を与えられます。
4. 面談は「評価」ではなく「興味喚起」の場に
スカウト型採用での面談は、通常の採用面接とは異なります。候補者を評価するのではなく、自施設の魅力を伝え、興味を持ってもらうことが目的です。
一方的に施設の説明をするのではなく、候補者の希望や価値観をしっかり聞き、それに合わせた魅力の伝え方を工夫しましょう。「あなたのキャリアプランに合わせた成長機会を提供できます」など、個別化したアプローチが効果的です。
中小介護施設だからこそできるスカウト戦略
大手介護チェーンと比べて予算や知名度で劣る中小介護施設。しかし、だからこそできるスカウト戦略があります。
1. 小規模だからこその「顔の見える関係性」をアピール
大規模施設では難しい「顔の見える関係性」は、中小施設の大きな強みです。経営者や管理者が直接スカウトメールを送ったり、面談に参加したりすることで、「トップの想いが直接伝わる組織」という印象を与えられます。
「当施設では、理事長自らが毎朝のミーティングに参加し、スタッフの声に耳を傾けています」といった具体的なエピソードが心を動かします。
2. 意思決定の速さを活かした柔軟な対応
大手では難しい柔軟な対応や迅速な意思決定は、中小施設の強みです。「勤務時間の相談に柔軟に対応します」「資格取得のための勤務調整も可能です」など、個々の事情に合わせた対応ができることをアピールしましょう。
ある関西地方の特別養護老人ホームでは、子育て中の介護士のために独自のシフト制度を導入。この柔軟な対応が口コミで広がり、同様の境遇にある優秀な人材の獲得につながりました。
3. 成長機会の見える化
中小施設では、「入職後3年でユニットリーダー、5年で主任」など、キャリアパスが見えやすいことも強みです。大手のように複雑な昇進システムではなく、頑張りが直接評価される環境をアピールしましょう。
「前職では10年働いても役職に就けなかったけど、ここでは2年でリーダーになれました」といった先輩スタッフの声は、候補者の心を動かす強力なメッセージとなります。
あなたの施設ならではの強みは何でしょうか?それを明確にし、スカウト活動に活かしていくことが成功への鍵です。
まとめ:攻めの採用で介護人材不足を乗り越える
介護業界の人材不足が深刻化する中、「求人を出して待つ」だけの受け身の採用では限界があります。スカウト型採用という「攻め」の手法を取り入れることで、潜在的な転職希望者にアプローチし、必要な人材を獲得することが可能です。
本記事で紹介した5つの手法を参考に、あなたの施設に合ったスカウト戦略を構築してみてください。
- 求人サイトのスカウト機能活用
- SNSを活用した能動的アプローチ
- 従業員リファラル(社員紹介)制度の構築
- 業界イベント・セミナーでの人材発掘
- 専門スカウトサービスの活用
特に中小介護施設では、大手にはない「顔の見える関係性」「意思決定の速さ」「成長機会の見える化」といった強みを活かしたスカウト戦略が効果的です。
人材不足という課題に直面している今だからこそ、新しい採用手法にチャレンジする価値があります。
介護施設の採用でお悩みなら、中小介護事業者専門の採用支援サービス「かいごのおたすけ採用隊」がお手伝いします。月額10万円で採用業務を完全代行し、戦略的求人設計から積極的スカウト活動まで、あなたの施設に最適な採用戦略をご提案します。
詳細はかいごのおたすけ採用隊をご覧ください。