
歯科医院の経営において、優秀な人材の確保は最重要課題のひとつです。しかし、多くの歯科医院が「求人を出しても応募が来ない」「良い人材が集まらない」という悩みを抱えています。その原因は、意外にも「求人票」にあるかもしれません。
実は、求人票の書き方一つで応募数が大きく変わることをご存知でしょうか?
本記事では、歯科医院の求人票作成における10のコツを紹介します。これらは実際に応募率を95%アップさせた実績のある方法です。人材確保に悩む院長先生はぜひ最後までお読みください。
歯科医院の求人難の現状と背景
まず、なぜ歯科医院の採用が難しくなっているのか、その背景を理解しましょう。
歯科衛生士の有効求人倍率は驚異の23.3倍!これは1人の歯科衛生士を23医院以上が取り合っている状況を意味します。一般社団法人全国歯科衛生士教育協議の調査によると、令和4年度の歯科衛生士学校卒業者は全国で7,162人に対し、求人人数は148,289人と圧倒的な人材不足です。

また、厚生労働省の「令和4年医療施設調査・病院報告の概況」によると、2022年10月時点の歯科医院数は67,755か所。これに対して新卒歯科衛生士の数は圧倒的に少なく、採用市場は完全な売り手市場となっています。
さらに、歯科衛生士の離職率の高さも課題です。日本歯科衛生士会の調査では、多くの歯科衛生士が複数回の転職を経験していることが明らかになっています。
このような状況下で、どうすれば優秀な人材を確保できるのでしょうか?
求人票が応募数に与える影響とは?
求人票は応募者との最初の接点です。この第一印象が採用成功の鍵を握ります。
多くの歯科医院が似たような求人を出す中、あなたの医院の求人票が目立つためには工夫が必要です。応募者は複数の求人を比較検討しており、情報が曖昧だったり魅力が伝わりにくい求人票は、すぐにスキップされてしまいます。
一方、的確な情報と医院の魅力を伝える求人票は、応募者の心に響き、面接につながる可能性を高めます。求人票は単なる情報提供の場ではなく、医院の魅力を伝え、優秀な人材を引き付けるための重要なマーケティングツールなのです。
応募率95%アップ!求人票作成の10のコツ
それでは、実際に応募率を大幅に向上させるための具体的なコツを見ていきましょう。
これから紹介する10のポイントは、実際に歯科医院の採用成功率を高めた実績のある方法です。ぜひ自院の求人票作成に活かしてください。
1. 写真入りのカラー求人票を作成する
多くの歯科医院が白黒の求人票を提出している中、カラー写真入りの求人票は一目で目を引きます。特に歯科衛生士学校への求人では、他院と比較して大きな差別化ポイントになります。

院長先生やスタッフの写真があると、「どんな人と一緒に働くのか」がイメージしやすくなります。最近では専門的なデザインスキルがなくても、Canvaなどのスマホアプリで簡単に作成できるツールが増えています。
写真撮影のポイントは、明るく清潔感のある医院の様子や、スタッフが生き生きと働いている姿を捉えることです。これだけで応募者の興味を大きく引くことができます。
2. 仕事内容を具体的に細分化する
「歯科衛生士業務全般」という曖昧な表現では、応募者は具体的な仕事内容をイメージできません。特に新卒者や未経験者にとって、これから自分がどんな仕事をするのかを知ることは重要です。
例えば、以下のように具体的に記載しましょう:
- メインテナンス(スケーリング、SRP、TBI)
- 診療アシスト(器具の準備、受け渡し)
- 器具の滅菌・消毒
- カルテ管理
- 薬品や材料の発注と在庫管理
さらに「受付業務はありません」など、業務範囲の明確化も安心感につながります。
3. ターゲットを明確にする
「歯科衛生士募集」という一般的な表現では、誰にも刺さりません。どんな人材を求めているのかを明確にすることで、応募者は自分が対象かどうかを判断できます。
例えば:
- 「〇〇線沿いにお住まいの方」
- 「子育て中の方も働きやすい環境です」
- 「ブランクがあっても丁寧に指導します」
- 「予防歯科に興味のある方」
このように具体的なターゲット設定をすることで、応募者の共感を得やすくなります。
あなたの医院はどんな人に来てほしいですか?
求人票で必ず押さえるべき5つの要素
求人票の基本的な構成要素を押さえることも重要です。以下の5つの要素は必ず明確に記載しましょう。
4. 給与・待遇面を具体的に明示する
「手当充実」という曖昧な表現ではなく、実際にいくらもらえるのかを明確に記載することが重要です。特に歯科衛生士は複数の求人を比較する際、給与面を重視する傾向があります。
全員が必ずもらえる基本給と手当を明記し、条件付きの手当(住宅手当など)は別途記載するとよいでしょう。例えば「月給25万円〜(経験により優遇)」のように具体的な金額を示すことで、応募者の不安を解消できます。

5. 労働時間・休日・休暇制度を明確にする
ワークライフバランスを重視する傾向が強まる中、労働条件の透明性は応募判断の重要な要素です。特に女性が多い職種では、家庭との両立がしやすいかどうかが大きなポイントになります。
具体的な勤務時間、休憩時間、週休日数、祝日の扱い、有給休暇の取得状況などを明記しましょう。「残業はほとんどありません(月平均2時間程度)」「土曜日は17時終了」など、具体的な情報が安心感につながります。
6. 職場の雰囲気・特徴を伝える
「アットホームな職場です」という抽象的な表現ではなく、具体的なエピソードや現場の声を盛り込みましょう。
例えば:
新卒3年目DH:「お昼はスタッフルームでワイワイ賑やかに過ごせます。院長先生も一緒に食事することもあり、気さくに相談できる環境です」
このような現役スタッフの声があると、職場の雰囲気が伝わりやすくなります。
また、医院の理念や診療方針、特色ある取り組みなども記載すると、応募者は自分の価値観と合うかどうかを判断できます。
7. スキルアップ・キャリアアップの機会を示す
歯科衛生士が求職する際、「成長できる環境かどうか」は重要な判断基準です。研修制度や勉強会、セミナー参加支援などの具体的な内容を記載しましょう。

「月1回の院内勉強会あり」「年2回の外部セミナー参加費全額支援」「認定衛生士取得支援制度あり」など、具体的な制度があれば必ず記載しましょう。
キャリアパスが明確になっていると、長期的なビジョンを持って働きたい人材に響きます。
8. 院長のことを自己開示する
歯科医院は院長の人柄が職場環境に大きく影響します。院長自身のプロフィールや理念、診療に対する考え方などを記載することで、人間味のある求人票になります。
「患者さんと向き合う時間を大切にしたいと考えています」「スタッフの意見を積極的に取り入れる風通しの良い医院づくりを心がけています」など、院長の人柄や価値観が伝わる内容を盛り込みましょう。
特に若手歯科衛生士は、「どんな院長の下で働くか」を重視する傾向があります。
ターゲット別!効果的な求人票の書き方
求人のターゲットによって、効果的なアピールポイントは異なります。ここでは、経験者向けと新卒・未経験者向けの求人票作成のポイントを紹介します。
経験者向け求人票のポイント
経験者が転職を考える主な理由は、「キャリアアップ」「待遇改善」「職場環境の改善」などです。これらのニーズに応える内容を強調しましょう。
- 専門性を活かせる業務内容(「予防歯科に力を入れており、衛生士の専門性を発揮できます」)
- 裁量権の大きさ(「担当患者制で、メインテナンスを主体的に担当していただきます」)
- 経験に応じた待遇(「経験・スキルに応じた給与体系、年2回の評価面談あり」)
- ワークライフバランス(「残業なし、有給取得率95%、育児との両立実績あり」)
経験者は自分のスキルや経験が活かせるか、さらに成長できる環境かを重視します。「当院ではあなたの経験を活かして○○に取り組んでいただきたい」など、具体的な期待を示すことも効果的です。
新卒・未経験者向け求人票のポイント
新卒や未経験者が最も不安に感じるのは「ちゃんと仕事を覚えられるか」という点です。教育体制や成長環境を具体的に示しましょう。

- 教育制度(「入職後3ヶ月は先輩衛生士がマンツーマンで指導します」)
- 成長プロセス(「1ヶ月目:見学・基本業務、3ヶ月目:簡単なSRP、6ヶ月目:担当患者制へ移行」)
- 失敗を許容する文化(「分からないことは何度でも質問できる環境です」)
- 同期の有無(「今年度は新卒衛生士2名採用予定です」)
新卒者には特に「先輩衛生士の平均勤続年数」「直近3年間の離職率」などの情報も安心感につながります。
また、学校で学んだことと実際の臨床現場のギャップを埋めるサポート体制があることも魅力的です。
応募につながる!求人票の差別化ポイント
多くの歯科医院が似たような求人を出す中、どうすれば自院の求人を目立たせることができるでしょうか?ここでは他院との差別化ポイントを紹介します。
9. 疑問を先回りして解消するQ&Aコーナー
応募者がよく持つ疑問や不安を先回りして解消するQ&Aコーナーを設けましょう。例えば:
- Q:ブランクがありますが大丈夫ですか?
A:もちろんです。現在も産休後5年のブランクがあった衛生士さんが活躍しています。復帰プログラムもご用意しています。 - Q:子育て中ですが、急な休みは取れますか?
A:スタッフの半数が子育て中の母親です。お子さんの体調不良などの際は、スタッフ間でカバーし合う文化があります。 - Q:未経験でも応募できますか?
A:はい。当院では新人教育に力を入れています。現在も未経験から入職したスタッフが多数活躍しています。
このように具体的な例を挙げながら回答することで、応募者の不安を解消し、応募のハードルを下げることができます。
10. 見学・面接のプロセスを詳細に記載
「応募したらどうなるの?」という不安を解消するために、見学から採用までの流れを詳細に記載しましょう。

例えば:
- まずはお気軽に見学にお越しください(所要時間約30分)
- 見学時に医院の雰囲気や業務内容をご説明します
- ご興味をお持ちいただけたら面接日を調整します
- 面接は院長と先輩衛生士が担当します(所要時間約45分)
- 合否は3日以内にご連絡します
- 入職日は相談の上決定します
このように具体的なプロセスを示すことで、応募者は安心して次のステップに進むことができます。
「まずは見学だけでも」と気軽に足を運んでもらえるような文言も効果的です。
求人票作成時の注意点と法的配慮
効果的な求人票を作成する際には、法律や規制に違反しないよう注意が必要です。以下のポイントに気をつけましょう。
年齢・性別による制限は避ける
「30歳以下」「女性のみ」などの年齢や性別による制限は、男女雇用機会均等法や年齢差別禁止の観点から問題があります。
ターゲットを絞りたい場合は、必要な経験や能力、仕事内容を具体的に記載しましょう。例えば:
- 「20代が活躍中の若いチームです」
- 「女性向けアクセサリーの接客経験がある方」
- 「力仕事を含む業務があります(20kg程度の荷物の持ち運び)」
このように、業務内容や職場環境を具体的に示すことで、適切な人材にアピールできます。
求人内容と実際の労働条件の乖離に注意
求人票に記載した内容と実際の労働条件が異なると、採用後のトラブルや早期離職の原因になります。また、意図的な虚偽記載は職業安定法違反となる可能性もあります。
「残業なし」と記載するなら実際に残業がない体制を整え、「研修制度あり」と記載するなら具体的な研修計画を用意しておきましょう。
求人票は医院と応募者の間の「最初の約束」です。誠実な情報提供が長期的な信頼関係の基盤となります。
実際に応募率が95%アップした事例紹介
ここでは、実際に求人票の改善によって応募率が大幅にアップした歯科医院の事例を紹介します。
田中歯科医院の事例
田中歯科医院では、3ヶ月以上歯科衛生士の採用ができず悩んでいました。従来の求人票は基本情報のみの簡素なものでしたが、以下の改善を行いました:
- カラー写真を追加(医院外観、診療室、スタッフ集合写真)
- 衛生士の具体的な業務内容を細分化して記載
- 現役衛生士のインタビューコメントを追加
- 教育体制を詳細に記載
- Q&Aコーナーを新設
その結果、2週間で4名の歯科衛生士からの応募があり、理想的な人材を採用することができました。現在もその衛生士は定着率100%で活躍しています。

さくら矯正歯科の事例
矯正専門のさくら矯正歯科では、矯正経験のある歯科助手の確保に苦戦していました。求人票を以下のように改善しました:
- 「矯正治療に興味のある方、未経験でも丁寧に指導します」と明記
- 矯正専門医院ならではのキャリアパスを詳細に記載
- 実際の勤務スケジュール例を掲載
- 患者層や診療方針を具体的に説明
- 見学会の日程を複数設定
その結果、1ヶ月で矯正経験豊富な歯科助手2名を採用でき、患者満足度も向上しました。
これらの事例から分かるように、求人票の改善は応募数や採用の質に大きく影響します。自院の強みや特色を活かした求人票作りが重要です。
まとめ:応募率アップの求人票作成ステップ
本記事では、歯科医院の求人票作成における10のコツを紹介しました。最後に、実践的な作成ステップをまとめます。
- 現状分析:自院の強み・特色、ターゲットとする人材像を明確にする
- 差別化ポイントの洗い出し:他院と比較して自院ならではの魅力を整理する
- ビジュアル要素の準備:医院の写真、スタッフ写真などを用意する
- 具体的な情報収集:給与体系、勤務条件、教育制度などの詳細を整理する
- 現役スタッフの声を集める:リアルな職場の雰囲気を伝えるコメントを集める
- 求人票のドラフト作成:本記事で紹介した10のコツを取り入れて作成する
- 法的チェック:差別的表現や誤解を招く表現がないか確認する
- 第三者レビュー:応募者目線で分かりやすいか、魅力が伝わるか確認する
- 公開と効果測定:応募状況をモニタリングし、必要に応じて改善する
人材確保は歯科医院経営の重要課題です。求人票は単なる情報提供ではなく、医院の魅力を伝え、理想の人材を引き付けるための重要なツールです。本記事で紹介したコツを活用し、応募率アップにつなげてください。
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